2006-01-01から1年間の記事一覧

ノロの呪い

流行りとは縁がなく、どちらかといえば廃りにばかり縁の深い素天堂なのだが、月曜日の明け方以来、久しぶりに〈流行り〉のまっただ中に突入した。 この三年、風邪もひかなかった素天堂なのに、なんと、ノロウィルスに感染したのである。三十分おきのトイレ通…

シニョール・ジョヴァンニ (創元推理文庫 (215‐1))の表の顔

イタリアの長靴の付け根、アドリア海に面した港町、オーストリア・ハンガリー帝国唯一の海への出口トリエステ。その陰謀と術策渦巻く町のホテルで、一人の男が死んだ。人品卑しからぬその男は、首に絞められた綱の跡を残し、体中を滅多刺しにされていた。シ…

雑感と第四巻報告

某所で、『黒死館』映像化の話が盛り上がっているらしい。素天堂としては監督はF・W・ムルナウ、法水はコンラート・ファイトにお願いしたい。熊城役はゲルト・フレーベ、支倉役はクロード・レインズできまり。スイス国境ジュラの山中に、オープンセットを建…

副産物+現況

尻に付いた火に追いたてられながら、検索作業をする日が続いた(過去形だが終わったわけではない)。そんなときにこんなところがひっかっかったりすると、ちょっとうれしい。今はなき英国の名門サーキットの記録集。ヒコーキにしても、自動車にしても、原型…

地味な読書

いわゆる地味な読書が続いているのだけれど、フッと思いついた語彙を検索するという遊びを合間にしてしまう。 おとといはロスコフだった。昨晩はネゲライン。こんな語彙を調べてみようと思わせる力が今のネットには存在するのだが、二件とも大ヒット。まずロ…

二つの顔in丸の内

最近は変わってきたけれども、夜7時を過ぎた丸の内仲通を丸ビルの裏から晴海通りに向かって歩きはじめても、僅かな残業者のいる部屋に灯された照明の、地上に映る仄かな灯り以外には周辺のオフィスビルにはほとんど人の気配すらない。それが、馬場先門を越…

今年最後の予定          

最近再読した、泡坂妻夫『11枚のとらんぷ』をさかなに、ある雑誌の思い出話でもと思っていたら、K氏の調べで、またも冬コミに受かってしまったことが発覚。三回連続の出展は予想外だったのでちょっと焦る。今回は『ファウスト』を中心としたからくり仕立て…

我も浦山しく思ひ、來たれり

〈第二回 ズンドコ杯争奪 読んでみやがれ!感想文の会〉、意外や、K氏のお題はノンフィクション。『新編 江戸の悪霊祓い師(エクソシスト) (ちくま学芸文庫)』高田衛だという。著者名は岩波文庫版『江戸怪談集』などで、なじみではあるが、このタイトルだけ…

げんそうとかいき

今週の日曜日、二十二日はK氏の発案で「弥生美術館」と、東大散歩にいった。久しぶりの根津では地図を見てもまったく土地勘がわかず、K氏の道案内に頼りっぱなし。急な坂を上りながら、自分の思っていた方と反対に曲がって目的地に着いた。前を歩くおばさ…

二冊の拾いもの「超革命的中学生集団」ハヤカワ文庫SF1974/角川文庫1976 / 朝日ソノラマ1971刊 サンヤングシリーズ

吾妻ひでおの前は、永井豪だった。『馬子っこきん太』から『ハレンチ学園』までは、大人向けも含めて『COM』の頃から読んでいた。今では手もでないが青林堂版の自選傑作集『よくふか頭巾』はギャグ漫画史に残る名作だったと思う。中期以降は作風が変わっ…

幻の隣国 はだかの少女が乱舞する〈ピエール・ルイス〉の夢の国

『ポーゾール王の冒険』 ピエール・ルイス 中村真一郎(後半一部三輪秀彦)訳 世界大ロマン全集23 東京創元社1957 地図には載っていないかも知れないけれど、この国は〈何処にもない国〉ではないと作者はいう。桜の木の下でサクランボをつまみながら毎朝の…

一冊の生き残り

あづまひでおに夢中になり始めたのは月刊『プリンセス』連載の「おしゃべりラブ」だったろうか。もう『少年チャンピオン』連載の「ふたりと5人」は五巻までくらいが刊行されていたはずだから、七十七年頃だった。それ以来『幕の内デスマッチ』まで十年近く…

オブジェに淫するも、またよし

Kくんが若干煮詰まっているようなので、無理矢理引っ張り出して、東十条はここに行ってきました。まちはずれの小さなお店では、こんな事が起きていました。これはそこででた小さなソルベの地球です。 昨晩の足穂増刊号打ち上げの楽しかった余韻さめやらぬな…

星戀 野尻抱影/山口誓子 中央公論社1954/1955 初刊鎌倉文庫1946の増補

当時の少年の大部分と同じに、素天堂は天文少年でもあった。渋谷の東急文化会館屋上に見えるドーム、今はその建物毎無くなっているが。その「東急プラネタリウム」に小学校時代何度も通っていた。創刊間もない『SFマガジン』を購入したのもそこのショーケ…

怪説 恐怖の“Singing in the Rain”

何しろ、物心ついた頃には、ミュージカルといえば『ウェストサイド・ストーリー』という時代だったので〈今でもあの作品はミュージカルの鬼っ子だと思っている〉、五十年代までのハリウッドミュージカルはほとんど現物を見たことがなかった。だから陳腐なス…

魅力的な録音機〈しゅんくん〉 『雲を笑いとばして』今江祥智 理論社1991

「読んでみやがれ!と言われたので読んでみました」第一回わりあい意固地なところがあって、たいした下地もないくせに人に薦められた本に手を出すのは消極的だ。そんなところを絹太氏につっこまれてこんな企画をたてられてしまった。初回ということもあり、…

はじめておりた阿佐ヶ谷駅06/08/27

先日書いた、『推理百貨店』で、〈井の頭公園〉のことを書いたこともあって、吉祥寺あたりでも散策しようと思った。まあ、散策ついでに古本屋さん巡りを絡めて、ということで、絹太氏に周辺の古本屋リストを作ってもらって、とりあえず降りたことのない阿佐…

なんと呼ばれようと薔薇は薔薇薔薇なのか? bibliotheca puhipuhi Nr.6 から

最新刊「発狂した仕立屋 その他の抜粋」は、じつは素天堂などの手に余る高度な評論集なので、一瞥してプヒプヒさんに敬意を表して、神棚に納めるはずだった。 冒頭の「発狂した仕立屋」の数学論に煙に巻かれ、サイバネティクスについての「第六対話」の先見…

『Film Obsession』凝血ブギ 新刊 映画は映画であるということ

なんだか、どこかで聞いたことのあるゴダール映画のタイトルみたいだが、今回の絹太氏の新刊読後の印象である。勿論作品のベースは〈カカ×イル〉という漢字で書けない漢民族の皇帝みたいな呼び方のジャンルなのだが、そのジャンルを知らなくてもおもしろかっ…

通販開始です

http://www5.ocn.ne.jp/~k594k/tuhan.html こちらでお申し込みください。八月一杯は初回特典、絵葉書がつきます。 なお、今回も赤坂ですぺらに、初回分をおいて頂いておりますので、そちらでもお願いいたします。

コミケ70 レポートとお礼

早めのつもりで、到着したらもうプヒプヒさんは作業中。挨拶もそこそこに準備に入って、正誤表とか特典のはがきを、会場到着分に投げ込み作業をはじめる。やっぱり準備をしておいたようでも、一般入場数分前まで内職が続く。途中、場内放送で「花火」の順延…

新刊案内 素天堂文庫 060812@コミケット70

『黒死館逍遙 第三号』「黒死館」とヴァン・ダインとバーナビー・ロス 一、ヴァン・ダインという探偵小説家 または如何にして彼は探偵ファイロ・ヴァンスを創造したか 二、日本に於けるヴァン・ダイン受容前後 三、ヴァン・ダインに対する挑戦 驚異の新人探…

卑近な例 絵画の展示について

若沖展で舞い上がって、上記について、ストレートに打ち出したところ、A君とS君と宗男議員さま、蔭軒氏、と素天堂の知りうる最上のコメンテーターから、ありがたい反応を頂いた。本来はコメントでお返しすべきだと思うが、この点については両氏の投句でおわ…

光学的な行為 東京国立博物館にて

http://www.jakuchu.jp/index.html 勿論、若沖の特異だが見事な墨の技法に驚いたり、鶴の連作の楕円の筆勢に感激したり、あのマトリックスの動物群像に涎を垂らしたりはした。同時期のいわゆる奇想の画家たちに対する、有名無名を問わない収集に対する、コレ…

「薔薇生籬に絡めとられた駑馬」 フリッツ フォン ヘルツマノフスキー=オルランド

あるエッセイの遍歴について この原題を持つ奇天烈な小説について語ろうとするとき、その時代の自分たちにとって『ユリイカ』という雑誌が、どれほど重要であったかを回顧することが必要になってくる。また昔話になってしまうが、当時は現在のように探せば見…

ElysiumとしてのAsylum  『博士と狂人』

読書家の理想郷とは、まず存分の財力があって、必要と思われる書籍はすべて手元に置け、さらに、自分の時間のすべてを、読書という行為につぎ込めることではないか。ここには、そのすべてを手に入れ、その生涯の大部分をつぎ込むことのできた稀有の人物が登…

黒死館逍遙 第三巻「『黒死館』とヴァン・ダインとバーナビー・ロス」

泣き言が二回も続いて素天堂はどうしたんだと、思われたかも知れませんが、その通り、はじめてのオリジナル原稿の作成に大泣きでありました。 素天堂の、《みんなこれくらい知ってるよね》的甘えをK氏に徹底的に指摘され、大幅な修正を脱稿間際まで続けてお…

琥珀色の珊瑚

いつからか、自分のなかで、固定観念といおうか、もっと激しく、固着といってもいいくらいの独りよがりが形成されてきていた。数十年に渉って造りあげられてきた蓄積が、じつはただの堆積でしかないのに気づかされる。松ヤニもこごれば琥珀になるかも知れな…

全体像 出現sigh!

やっとの事で、個人誌の原稿が一通り完成した。データはそろっていると思っていたのに、それを形にするのがこれほど苦労だとは。しかも、内容に独りよがりの個所が多く、下読みしてくれたK氏の怒声が、うしろ頭に痛い一日でした。まだ見えただけの全体像、完…