2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ElysiumとしてのAsylum  『博士と狂人』

読書家の理想郷とは、まず存分の財力があって、必要と思われる書籍はすべて手元に置け、さらに、自分の時間のすべてを、読書という行為につぎ込めることではないか。ここには、そのすべてを手に入れ、その生涯の大部分をつぎ込むことのできた稀有の人物が登…

黒死館逍遙 第三巻「『黒死館』とヴァン・ダインとバーナビー・ロス」

泣き言が二回も続いて素天堂はどうしたんだと、思われたかも知れませんが、その通り、はじめてのオリジナル原稿の作成に大泣きでありました。 素天堂の、《みんなこれくらい知ってるよね》的甘えをK氏に徹底的に指摘され、大幅な修正を脱稿間際まで続けてお…

琥珀色の珊瑚

いつからか、自分のなかで、固定観念といおうか、もっと激しく、固着といってもいいくらいの独りよがりが形成されてきていた。数十年に渉って造りあげられてきた蓄積が、じつはただの堆積でしかないのに気づかされる。松ヤニもこごれば琥珀になるかも知れな…

全体像 出現sigh!

やっとの事で、個人誌の原稿が一通り完成した。データはそろっていると思っていたのに、それを形にするのがこれほど苦労だとは。しかも、内容に独りよがりの個所が多く、下読みしてくれたK氏の怒声が、うしろ頭に痛い一日でした。まだ見えただけの全体像、完…

共妾學校? 巧智文學 -東西共通の趣味文学- 

和田信二郎著 明治書院 昭和二十五年一月刊本当に、こんな本を読んでる場合ではないんだが。しかも感想を日記で上げる時間がどこにある、状態なのだが、しかし、これは凄い。「言語遊戯の系譜」「ことば遊び辞典」の大先駆。本邦古文献から漢籍、西洋の広告…

夕まぐれの散歩から 「深夜の散歩―ミステリの愉しみ (講談社文庫)」へ

二人して煮詰まりかけた日曜日の夕方。久しぶりにそこいら辺を歩きたくなって、絹太氏に声をかけて表へ出た。家の前はいつでも曇り空みたいに日差しの少ない狭い路地なのだけれど、一歩外へ出ると、大きな公園と運河があるので南西に向かって思い切り大きな…

周知のこと

誰も知らなかったり、新しい発見があったりするのを書くことは楽しい。 ほーらね。すごいだろう。といえる快感がたまらなかったりする。 だけど、周知のこと、だれでも口にすることを、殊更に構成しなければならない作業は、快感より苦痛だ。ましてその内容…