2007-01-01から1年間の記事一覧

立ち話の素敵な人

コミケに参加していつも思うのは、キチンとした世界を持っている人の立ち話は楽しい、ということだ。 前日までに準備を終わらせ、くつろいだ気分で望んだ〈コミケ73〉だったが、ジャンルを変えてみたのが大正解だった。右隣が探偵小説研究会の『CRITI…

昔、初山滋が……

最初に『不思議の国のアリス』とその著者の〈ルイス・キャロル〉に興味を持ち始めたのは、雑誌『現代詩手帖』での種村季弘の『ナンセンス詩人の肖像』連載中の「どもりの少女誘拐者」でした。勿論それ以前から、古い絵本などに興味はあったけれども、具体的…

今回のサービス

いつもお付けしているポスト・カードですが、内容に関連したミュシャの作品が見つかりました。縦長のポスターなので今回に限り、会場配布限定のミニポスターを製作いたしました。サイズはA4半切、A5半切の二種類。ご希望の方は数に限りがありますので、…

三十日東2 V−03b

冬コミ用新刊、出来てきました。目もあやな朱赤は今回のテーマにふさわしいと思っているのですが。今回の内容は期せずして、黒死館美女列伝になってしまいました。 黒死館逍遙 第六巻 黒死館妖あやしの花舞台/前説 一、機巧からくり人形・操人形/影の女王〈…

中井英夫「黒い水脈」と塔晶夫「日本の異色作家」

『虚無への供物』との出会いはご多分にもれず、一九六九年の三一書房版である。もっとも、読了後、興奮して話していたら、兄が初版の読者で、自分もそれを読んだという同級生がいたから、決して、著者自身が言うような、黙殺された存在ではなかったのではな…

とっても食えない〈蜜の味〉『奇術師の密室』

「マーリニ」も「フーディニ」も、奇術大好き人間の素天堂にとって、この標題は読んでください。と言われているようなものだ。冬コミの大山を越えたところで、いわばご褒美で読み始めた。一瞬で読み終わった(ような気がする)。 一流奇術師の前歴がある、眼…

今やっと、『第三の演出者』。

最終巻。まず収録されたエッセイの〈乱歩への真情〉という、まるでフーガのようなテーマのリフレインの心地よさに身をゆだねる。劇評家という、まったく商業作家ではない戸板康二という存在を、ミステリの世界に誘った乱歩の業績は小さなものではない、その…

〈手〉のいいコイコイじゃあるまいし 〈由比ヶ浜の澁澤さんを真似したわけではないが〉

やっと五校でOKが出たのが送稿日の前日、夕方だった。章によっては四校ですんだが、四光、五光と、これがコイコイなら一財産だったかも知れない。自分のお気に入りのジャンルだったから、キーボードは滑るし、論旨はジャンプを繰り返す。するとしっかり釘…

本当に暖かい、んだけれど。文明の利器の導入について。

今年は異常な気温の変化が続いて、寒暖の差がおかしい。それでも、今までの暮らしの中で暖房機の使用に消極的だったので、震えながらも、靴下を穿くくらいでパソコンの前にいた。ブルブルしながら個人誌の準備をしていたら、見かねて、K氏が小さなファンヒ…

本が出てこない

今冬コミに向けて、いわば最終段階。いろいろと問題もあるのだが、特に問題なのが今日の標題。先週も、引用元の『世界戯曲全集』が見つからなくて大騒ぎだった。ところが、別の本を探していたら、まったく筋違いの棚から、今、出現した。今回参照しようとし…

〈吸血鬼〉と、いつから呼ばれたか?について

まず、訂正から。『民俗学の話 A Book of Folklore』ベヤリング・グウルドの初刊本の発行は、昭和五年大岡山書店でした。キーボードの滑りでちょっと古めに書いてしまいました。但し、『國學院雑誌』での連載は、大正一五年十一月から昭和五年一月である。 …

大正時代の抄訳本 

ヨーロッパをさすらう異形の物語〈上〉―中世の幻想・神話・伝説作者: サビンバリング=グールド,池上俊一,Sabine Baring‐Gould,村田綾子,佐藤利恵,内田久美子出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2007/09/01メディア: 単行本 クリック: 14回この商品を含むブログ …

コミケット73

当選いたしました。今回も平均年齢の引き上げに協力できます。 ジャンルの変更はとっても不安でしたが、 十二月三十日二日目東2ホール “V”ブロック−03b に決定いたしました。 やっぱりお隣は、プヒプヒさんです。今回も薫り高い出店物に囲まれての登場…

虫太郎は隠れ鉄ちゃんだったのか 

大宮に開業した「鉄道博物館」の前身「交通博物館」は、神田万世橋の旧万世橋駅舎後にあった。建物から飛び出した蒸気機関車と新幹線の頭部がちょっと衝撃的な、レイアウトがなつかしい。 開館当時は東京駅高架下にあって、それが関東大震災により被災したと…

紀田さんと荒俣さん 三十年の宿題

前回も書いた通り、その後、幻想世界にのめり込むようになったとき、その水先案内になってくれたのが、表記のお二人であった。お二人の編集された雑誌「幻想と怪奇」についてのエピソードを始め、書き出せばきりがない読者、享受者としての個人的な思い出が…

黒死館の昔

先日、これから「黒死館殺人事件」を読まれるという方から通販のお申し込みを頂いた。高校生の昔から何度も挫折を繰り返し、辞典作業を自分に科してやっと読み切ったすれっからしの落第読者に比べて、その方はなんと幸せかと思う。思う存分、その不思議世界…

追記 と改題

表題に使ったAの言葉の第一候補はAstounding〈アスタウンディング〉のつもりだった。草創期のSF雑誌名がまず頭に浮かんだからだった。ただ、いまさらそんな言葉を使ってもと思ったので今ならわかりやすいAmusementにしたのだが、今、録画してあったETV特…

なめざえもんのM.A.Z.E.(Mechanical Astounding of Zaemon Entertainment)

NHK教育のミニアニメ『ぜんまいざむらい』が、毎朝出勤前のお楽しみなのだが、先日のエピソード「なめざえもんのワナ」を見ていて、こんなイヴェントがあったら楽しかろうと思った。 タイトルは『カラクリ大江戸のすべて! 今明らかになる見栄城の秘密』…

千駄ヶ谷詣で 最終便 

『劇場の迷子―中村雅楽探偵全集〈4〉 (創元推理文庫)』 雅楽もの総集編四冊読了。『團十郎切腹事件』の入手が三月始めだったから、約半年で短篇作品が完結した。約半世紀に渉る雅楽の語りがたった半年で読めたわけである。その後の長い古本行脚の始まりと、…

素天堂のアンテナ 改訂作業

みなさま、いつもいつもご訪問有難うございます。 多分ご覧になっていらっしゃる方でも、ほとんどお気づきにならないと思いますがリンク・リストの改訂を久し振りに行いました。廃止、休眠されたサイトをリストから外し、移動したサイトは可能な限り復元させ…

また“あの”季節が……2

いつもいつも、薫りだけで終わってしまうあの季節なのだが、開花の遅かった今年、やっとこの近くの名所を撮ることができた。小名木川堤の金木犀である。 このお陰かどうかはわからないのだけれども、この一週間、周辺は気も狂わんばかりと形容される、あの薫…

機械の眼 或る映畫技師の手記ルイージ・ピランデルロ1916 ノーベル賞文學叢書s.11.1今日の問題社

現在では前衛的な戯曲家としての業績が評価されるピランデルロだが、その文学的な出発は詩人であり、小説家でもあった。この作品が雑誌に連載された一九一五年といえば、映画産業草創の時代、チネ・チッタはもちろんU.F.A.もU.A.もまだなかったころに、…

また“あの”季節が……

昨日こちらでは、明け方に強い雨が降った。幸い出勤時には止んだのだが、そのせいでかもしれないが、今年最初の“あの”薫りの洗礼を受けた。 いつも通る小名木川の橋を渡りきったその瞬間のことである。一瞬振り向いたものの、当然ながらその木の影など目にも…

エセ・ルナティーク番外編 少女マンガのBGM(ポップス編)1982.01

セーラ フリートウッド・マック 沙羅を英語読みすれば“セーラ”訳詞がないので、意味はよくわからないが、スティ−ヴィー・ニックスのけだるい声は深夜のお茶会にふさわしい。 魔女の季節 ドノヴァン 翼狩りの季節は、あの怖い魔女の季節。シタールの音色と高…

窓ROM

久々に、赤坂のIさん、いや、現状は戸田のIさんか。どっちにしろ元気そうに薩摩焼酎を飲みながらだという声を聞けて、ちょっとホッとした。現状は凄まじいようだが、進みつつあるということで、先は見えてきているようだ。そのトド氏と半年違いで新生児に…

街を歩いて −素敵なテキスト−近代小説〈都市〉を読む

あてもない散歩が好きだった。どこかを目標にしているときでさえ、そこへの道筋を一歩一歩辿るのが好きだった。移動手段の交通機関を考えても、飛行機より電車、急行より各駅停車。レールより道路が好きだった。市街電車、乗合バスの、悠長であり遠回りでさ…

ユメノ ナカデ イキル

本当に長い間、自分一人の世界に閉じこもって過ごしてきた。とはいえ、精神病理上の自閉症にはなりきれないので、わずかに残った社会性で日々の糧を賤いできた。それだって便宜上の社会性に過ぎないから、自分の中に人を踏み込ませないためには、あれかこれ…

ディアギレフの二つの顔

その名前と同じく、彼は二つの顔を持っていた。セルジュと呼ばれる西欧向けの顔。セルゲイと呼ばせる父祖の地ロシアに向けた顔。可憐なロメオとは雲と泥の差ほどもあるけれど、なんと呼ばれようとディアギレフ(これも本当はジャーギレフが原音に近いらしい…

一部の方への追加情報/東 久雄の正体?

素天堂の個人誌『黒死館逍遥』第五巻の付録につけた、『新青年』昭和九年七月号掲載のエッセイ「淺草興行界回顧」には〈東 久雄〉と筆者名がクレジットされていた。お読みの方はおわかりだと思うが、オペラ界の内情にも詳しく、どう見ても業界関係者に違いな…

畏怖と羨望 米沢嘉博に花束を 虎馬書房2007

ここに一冊の本?がある。刊行はアスキー出版局一九九五年。重要な発行日付は十二月二十五日。マイクロソフトの画期的なWindows95の日本発売の一ヶ月後、それまで電子機器にまったく縁のなかった素天堂が初めて手にしてコンピュータのOSであり、そしてそれ…