2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

むべ山風を……

獅子文六の戦後の佳作が『嵐といふらむ』だ。戦後すぐの公職追放を自ら戯画化した作品『てんやわんや』で息を吹き返し、良質の風俗小説で戦後を描き続けた彼が、戦後廃止になった華族制を戯画的に取り上げた作品である。 虫太郎が恐怖を覚えたくらい、戦前初…

〈Out of Time〉時間旅行者の孤独

良い古本屋さんが思いがけない本をリストに忍ばせたのを見つけたりすることがある。そんな時、この本屋さんはもしかするとお店の番台の奥に、小さなタイムマシンを常備していて、夜な夜なだか、週一だかにその時代にいってその本をこっそりこっちの世界に持…

知恵熱でダウン

六、七年ぶりで大風邪を引いた。金曜日にですぺら。昨日は川崎市民ミュージアムで、「粟津潔展」その後は、K氏とは初めての素天堂幼少期に過ごした、溝の口訪問と、日記のネタには困らないはずなのだが、半蔵門線を降り、自宅へ歩き始めた途端、強烈な寒気が…

地の利を生かして

十三日の金曜日夕、不吉な日柄をものともせず、職場の近所ということもあって、家にいたK氏と「深川いっぷく」を覗いてみた。 あまり大きくないスペースを最大限に活用しているせいもあるが、翌日の「いっぱこ古本市」の準備で大わらわ、奥のブースにある目…

コーエンはこれでおしまい

友人から最近、地元の県紙に載ったという記事の紹介があった。ユダヤ・ジョークのあまり出来のよくないものの引用なのだが、イスラエル・コーエンという〈固有名詞〉がどう使われたかという顕著な見本として全文を画像として引用する。 岐阜新聞2007.03.07 …

もう一つ意外なところから

K氏が見つけたジョン・ディーの評伝を覗いていたらTIMON COCCIUS, BREMEN, 1589という名前が飛び込んできた。これはもしや〈コクチウス〉と読みはしないか。早速検索にかけてみると、勿論TIMONではヒットしなかったが、COCCIUSで大当たり。 所で、眼科に使う…

逆遠近法という考え方

(錬金術や占星術などは)いかさま詐術か、さもなければ、誤った科学(「疑似科学」もしくはpseudo-science)であることになってしまう。そして、そうしたものをはびこらせた中世の「非科学的」な思想性が、厳しく問われもする。自然選書版172p 現在の科学思…

幻の幻影 映画化『黒死館殺人事件』

いわゆる2ちゃんに、恐るべし『黒死館』を語るスレッドがあるのは知っていたが、そのあまりの建設性の高さに辟易して、ちょっとご無沙汰していた。先日久しぶりに覗かせて貰ったら途轍もない大ネタが転がっていた。2ちゃんねるとはいえ、構成された方がい…