2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

人情話の夜

誕生日のプレゼントに、K氏が用意してくれたのは、なかのZERO大ホール「春風亭小朝 独演会」だった。ご幼少の砌から下々の演目を好み、ラジオから流れる円生の喉をしぼるような独特の発声や、金馬の頭の後から出るような高音を聞いて育ったから、落語は少年…

ちょっ鉄話

四月から、都心部のある地下駅で就業している。各駅のホームや階段を歩き回って作業しているのだが、その時の娯しみが一つある。その路線に乗り入れている京浜急行の車両の発車音である。臙脂とアイヴォリーのツートーン塗装もお気に入りだが、その発車音が…

夢の城 現の事件

このところ、次の新刊に向けて魔界に上る日々を送っている。そんななか既に旧聞に属するけれど、南ドイツの田舎町でこんな事故があった。 澁澤龍彦の『異端の肖像』、川田喜久治の『聖なる世界』1971などで知られた、と言うより現在では某テーマ・パークに聳…

「アンテア」西洋美術館での再会

1980年といえばもう三十年前なのだが、その年の暮れ、上野国立西洋美術館で、「イタリア・ルネッサンス展」と題された、奇跡のような美術展が開催された。美術史上の巨人と、当時やっと再評価され始めたマニエリスムの画家たちで構成された今思えばとんでも…

マニエリスムの時代

先日、ひょんなことでできた時間を使って、銀座へ。まっすぐに向かった先は「プランタン」の先の小さな画廊「スパン・アート・ギャラリー」。故・種村季弘氏の回顧展である。「オマージュ 種村季弘」と題した企画の前半、「マニエリスムと種村季弘」のほとん…

ブロッケン現象in日本

小学生の頃は図書室に入り浸って、人の読まない本を手当たり次第に読んでいた。その頃のお気に入りは、まだ身近だった宝文館からたくさん出ていたNHKラジオドラマのノヴェライズのシリーズと、絵入りの知識本だった。いわゆる『せかいの◎◎をさぐる」という体…