虫本 キリシタン関係

長い付き合いといっても、そうそう巡り会えるはずのない虫本だが、今回は黒死館本文が、虫太郎によるフィクションであることの裏証明になる本が手元に来た。
青陵随筆 濱田耕作 座右宝刊行会 1947
戦後早い時期から美術書の出版に取り組んできた貴重な書肆から出された、濱田青陵最後の遺著。青陵は考古学の重鎮であったが、その興味の範囲は広く建築から、宗教学にまで及んだ。建築に関しては次の年に『橋と塔』が戦後再刊されたが、昭和初期のキリシタン関係書は残念ながら再刊されることはなかった。
黒死館に深く関わる天正少年使節について、参照することの多かったその『天正遣欧使節記』から漏れたと思しいキリシタン関係の随筆が二篇、この書に収録されいる。「天正遣欧使節の話 特に其の歓迎舞台面に現れた女性」に書かれたビアンカカペッロについての詳細、初出昭和八年四月『人情地理』と、「天正遣欧使節への贈答品」のリストは貴重。その中には勿論秀吉への献上品クラビチェンバロの詳細も登場はするけれども、重要なのは彼の聖宝類という記述にふられたレリケというルビだ。初出は昭和六年二月雑誌『徳雲』、もしかするとこれらが虫太郎のネタだったのかも知れない。
もう一冊も戦後のもの。『聖ザビエルの生涯と右腕の由来・奇蹟諸文献』吉浦盛純 鎌倉聖ザビエル会 1949
日本渡来四百年記念と扉に入った百ページに満たない小冊子だが、ザビエル聖人の聖遺物、右腕に関する数少ない文献。
ザビエル没後の経緯と右腕の起こした奇跡の記述は興味深い。