老耄の域

先日久しぶりに古本市の抽選に当たった。1962年発行の「SFマガジン 臨時増刊 特集 恐怖と怪奇」だった。

大喜びで会場を出ようとしたら、一階で古本屋ツアーさんに出会った。軽くご挨拶したのだが、よっぽどニヤケていたようで、一発で見抜かれてしまった。ところがである。その号には、記憶も生々しい「信号手」も「十三階の女」も載っていなかった。先週野暮用で、S教授とお会いした際に、そのことを愚痴ったら、何を今更という反応だったが、まあ、年寄りのノスタルジイですと申し上げた。その場は所用もすみ、お別れしたのだが、その日のうちに「つぶやき」でくわしい答えを返して頂いた。単なる素天堂の勘違いで、その前の年に、発行された同企画と混同していたのであった。半世紀も前のことだから、記憶違いもやむを得ないが、ちょっとがっかりだった。今の作業が終わったら、改めて平井呈一の怪異譚エッセイでもじっくり読み返してみよう。
ともう一つ、先週末三井記念美術館の帰り、丸善によって、三十年ぶりの復刊だった『星戀』の中公文庫版を買った。帰りのバスの中で、K山に、この中に抱影が松本泰に貰った革ジャンパーの話が出るよと自慢していたのだが、ざっと読んでみたところどうやらそれも空振りだった。泰夫人の松本恵子のエピソードが登場するので、どうやらこれも他の著作と混同していたらしい。「つぶやき」でもつい昔話に引っかかって、口を挟みそうになるのだが、気をつけなければなるまい。
『星戀』少し丹念に読んでいくと、「空の祝祭 十一月」132pに勘違いのもとをみつけた。泰譲りだったのは、革ではなく純毛のジャンパーであった。