放蕩でさえ生真面目な!もう一つの英国十七世紀 ロチェスター卿の猿―17世紀英国の放蕩詩人の生涯

英国における“王政復古”という、われわれにとってもう一つわかりにくい事象の代表的な概念のなか、エリザベス朝ルネサンスヴィクトリア朝の間の長い、世界史的にも低調な、期間に登場した不思議な人物たちに関する評伝。

ペストの荒れ狂う、みのりのない戦闘の続いたこの時代の流れと、眼をみはるような破廉恥と寸鉄釘を刺す風刺詩の大盤振る舞いにもかかわらず、この貴族詩人の生涯にとうとう思い入れも、憧れもなく読み終わってしまった。素天堂としては、ユリウス・クリンガーの挿絵に彩られたエロチックな劇詩「ソドム」の作家だったのだけれど、それも、グリーンによって一刀両断に切り捨てられてしまって、欲求不満は募るばかりだった。

勿論この作品は“評伝”であって、物語ではないのだから、史実から離れることは不可能だし、「謎の蔵書票」にあった波瀾万丈を求むべくもない。それにしても、酒と女で我とわが生涯を縮め、英国王の側近でありながら、才気煥発なからかいの詩を僅かに残して、三十三年の命を閉じた魅力あふれるはずの人物像が、こんなにまじめに語られたのでは。もったいないじゃないか!これこそ「不完全な歓び」以外のなにものでもないじゃないか。http://www.pornokrates.com/rochester.html