2004-01-01から1年間の記事一覧
前日の雪から一転して快晴。並ぶこともなくゆっくりと入場して、失礼文学会です。もちろん目標はプヒプヒさんの新刊。無事落手。http://d.hatena.ne.jp/puhipuhi/20041231#p1 そこで、予定より早くついたのに、石井春生さんが立ち話をされているところだった…
「イカロスの飛行」レイモン・クノー 滝田文彦訳 筑摩書房 1972 オリジナルはもちろん文庫も品切 翻訳書誌はこちらへhttp://www.peterpan-rock.com/bonjour_raymond_queneau.html クノーの作風といえば、前衛的な試みをしていながら、読者にその作為を感じさ…
小説推理 二〇〇五年一月号 双葉社 特集 幻想と怪奇への誘い⑨ 中井英夫『虚無への供物』の原風景を探る 秘稿解禁!アドニス版『虚無への供物』序章 発売初日にあてにしていた錦糸町駅ビル某書店に入荷がなく、一日中5、6軒の本屋を探しましたがみつからず…
「世紀末奇芸談」以来、奇術にはまっている、素天堂究極の一品。作品社の看板シリーズ「日本の名随筆」単漢字による本編100巻に続く別巻の一冊で、本編も「嘘」「夢」「香」など好編集の多い精髄揃いのアンソロジー群だが、この「奇術」も、編者にアマチ…
物語はあるオークションでめぐり合った奇妙なオブジェからはじまる。鸚鵡貝、木製の人型、懐中時計などで構成された枠取りされた木箱から作者のフランス十八世紀、アンシャン・レジーム(旧体制末期)への旅が始まる。主人公である少年の人面疽(なんと当時の国…
「雪の中の三人男asin:4488508022」「消え失せた密画asin:4488508014」 「一杯の珈琲からasin:4488508030」「ケストナーの生涯asin:4828832394」 ポール・ギャリコ「ハイラム氏の大冒険asin:4150401160」 まずきっかけはチビで眼鏡のハイラム氏との再会から…
現居に移って以来の、大整理敢行中。書棚がまたもや崩れたり、本のために余りにも悪すぎる環境を修正すべく、K君の叱咤と先導を借りて、移動用の本を整理。で御決まりの、埋もれていた本や、なかったはずの本が現れるのをあれよあれよと見ている(やれよ>…
パンプルムース氏対ハッカー マイケル・ボンド 木村博江訳 創元推理文庫 ISBN:4488215076 遅ればせながら、好調ユーモア・ミステリ・シリーズ、パンプルムース氏とポムフリットコンビの6冊目。珍しくハイテクがテーマであるが、やっぱりパ氏はパ氏。魅力的…
物語のコネスール、プヒプヒさんの(多分)自分が読みたいから訳した(であろう)シリーズ、ビブリオテカ・プヒプヒ。第1弾の抱腹絶倒ながら、なぜかちょっとこわいジュゼッペ少年の樟脳くさい生い立ちの記、レオ・ペルッツ「アンチクリストの誕生」に続く、今…
失礼文学会プヒプヒさんのところです。今回は案内してくれる人が一緒だったので、12時過ぎについて、無事2冊確保できました。牧人さんご安心ください。そのすぐ後完売したらしいです。今回は頑張って前回の2倍も作ったのに。 お隣の西方猫耳商会さんでも…
ジャン・シャロン 小早川捷子譯 国書刊行會1996 ISBN:4336038147 このところ変態づいてと言ったら、周囲から「お前が変態から離れたことがあったか」と大笑いされた素天堂です。そこまでいわれたら居直るしかないわけで、今回は世紀末レスボスの女王ナタリー…
小学生のころ、まだ開発の手の入らない雑木林が多かった川崎市の中央部でのこと。遊びに行って山芋掘りの穴に落ちて死んだ子がいた。ローム層の赤土が崩れて出られず、空腹を土で満たしたのか、体内から赤土が出たという噂だった。 淡いベージュのフランス装…
素天堂は騙されるたのしみのために探偵小説を読む。だから、ケレンのきついアクロバチックな物ほどうれしい。たとえばロード・ダンセイニの「二瓶のソース」のようなおいしい料理や、ジョイス・ポーターおばさんの「ドーヴァー4 切断」のようなすてきな道徳…
古い友人によれば酒の友には文庫本がいいと言うことだ、もちろん、異論は差し挟むつもりはないが、手持ちぶさたのときには素天堂は新書がうれしい。古くは岩波、新参でいえば集英社、ちくま。中堅なら講談社、クセジュ。特異なビジュアル系なら創元社、知の…
清原なつの「花岡ちゃんの夏休み」りぼんマスコットコミックス RMC140 http://www.fukkan.com/vote.php3?no=14624 たまには、非現実の本について語ろうか。 心の中から探していたある本を、偶然見つけたときに同時に手を差し伸べた人がいた。本を読むとい…
テオフィル・ゴーティエ 田辺貞之助譯 新潮文庫 http://www.fukkan.com/list/comment.php3?no=3817 最初、タイトルを「幻の女」としようと思ったのだが、ウールリッチの“Phantom Lady”と混同されそうなので、本文末尾のこのフレーズをタイトルにすることにし…
悪い癖で自分の蔵書を確認しないで、まず、ないものと思って探してしまう。今回はワイルドの「カンタービルの幽霊」を読みたいと思って、例によってgoogle検索で、珊瑚書房版 後藤優訳の「カンタービル館の幽霊」を検索したのだが、思いもかけない高価な本に…
ヴィンセント・プライズ ピーター・ローレ ボリス・カーロフ ヘイゼル・コート オリーヴ・スタージェス ジャック・ニコルソン出演 AIP 1963 DVD OPSD-S113まだ学研M文庫「ゴシック名訳集成Ⅰ」が入手出来ないので、やっかみ半分の協賛企画。何しろ日夏訳「大…
参照した原作は「金色の眼の娘(附/フェラギス)」 バルザック 木越豊彦/樋口清訳 寺田透解説 万里閣 昭和23年最近お気に入りの映画から。 冒頭から20ページ以上は、延々と19世紀半ばのパリの街と人の風貌について語られる。度々言及されるゴシック小…
ジョナサン・キャロル 浅羽莢子訳 創元推理文庫/1992 再読して驚いた。この作品は魔法と崩壊のイメージがこんなに強かっただろうか。 魔法でいえば、使い魔の犬がブルテリア ビッグトップ(テリー山本のまんが「バウ」の主人公ね)で、その間抜けな顔に似合わ…
はてなアンテナには、アクセス数の表示サービスがあります。素天堂も随時参照して一喜一憂しているのですが、最近、自分が考えるより多くの方にご覧いただいているような気がします。趣味のきつい我が儘なリストだと自分では思っているのですが、ごらんにな…
アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス この美しい三人が繰り広げる挫折と喪失の物語。 NHKBS2で放映されているアラン・ドロン特集の中で素天堂のピカ一だった作品。何回見たかわからないくらいなのに、今でも新鮮だった。エッフ…
ハイネが「流刑の神々・精霊物語」でヨーロッパ人として自分の過去から「説話」を取り上げたとすれば、この本は、物語の原型としての人類全体の財産「説話」を、殆ど全世界的な視野で緻密に掘り出し、比較した博引旁証を絵に描いたような名著。 個々の挿話の…
朝日新聞2004年4月20日受賞理由 歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献に対して氏の作品を知るものにとって、この受賞が如何に遅すぎたかは自明だと思うが、それでも率直にこの受賞を喜びたい。 よかったね「風雲児たち」諸君! なかんずく保科…
学研ホラーノベルスの旧刊。品切れ中。 手元にありながら読まずにおいて、結局人から借りて読むていたらく。だが、借りてまで読む価値のあった1冊。 冒頭の奇矯なモノローグから引き込まれてゆく。主人公の悪意と周囲の人物の悪意のいかにもゴシックっぽい…
もう終わってしまったのだけれど、ミステリ好きが何人見に行ったかと思われるくらいひっそりと開催していたのでちょっと記録しておきたい。 おしゃれ?なタウンマガジンとして発足した「the S.H」誌の発行元ミント・パブリッシングが主催した、ヴィクトリア…
今でも、版を重ねる定番についての昔話 素天堂が手に取ったのは戦後版の紙の悪い頃の白水社版でした。 裏見返しに書かれた前の読者の万年筆書きの「読了、涙滂沱として止むる能わず」の文字を、何をバカなと思いつつ読み進んだものでした。 軽妙な軽口のやり…
今まで、ホームページに余裕がなく、書けなかったレポートをこちらで。 会場は、本郷の旅館「鳳明荘森川館」荷物(処分本)が重かったので、東京駅北口から1時間に2本しかない“荒川土手”行きのバスで「東大正門前」へ、ついてまだ覚束ない記憶を頼りに歩きは…
キリスト教によって地中に埋もれさせられたゲルマンのいにしえの神々。思わぬ迫害によって辺境に追いやられ魔神(デーモン)に姿を変えさせられてしまったギリシャの神々。それらの悲劇の神々を語ることによって、グリム兄弟によって掘り起こされた、眠れるゲ…
今回は、久し振りの現行本。しかも何を今更の「ゲイルズバーグの春を愛す」。内田善美の作品がカヴァージャケットになって、今では彼女の作品が見られる唯一の書籍となってしまった。「ゲイルズバーグ」といえば、早川書房の名叢書「異色作家短編集」の衣鉢…