新書礼賛

古い友人によれば酒の友には文庫本がいいと言うことだ、もちろん、異論は差し挟むつもりはないが、手持ちぶさたのときには素天堂は新書がうれしい。古くは岩波、新参でいえば集英社、ちくま。中堅なら講談社、クセジュ。特異なビジュアル系なら創元社、知の再発見双書。それぞれに個性があって、例えば、一流の学者の余技や新進の新しい視点が楽しかったり、専門家が達意の分野を肩の力を抜いてお茶の時間のお相手をしてくれるときもある。
岩波なら中野好夫の「スイフト考」、臼田昭「ピープス氏の秘められた日記」村上陽一郎「ペスト大流行」斉藤国治「星の古記録」。
講談社なら井波律子「酒池肉林」下村純一「不思議な建築」地図の文化史の嚆矢にして白眉、織田武雄「地図の歴史 世界編・日本編」。
クセジュなら一連のオカルティズム関係の文化史的著作。一番にはルイ・ヴァックス「幻想の美学」かな。
素天堂の手元に一番多いのは中公新書。まあ、興味の方向が一番合っているのかな。野崎直治「ヨーロッパ中世の城」これは大御所、大類信の城郭論が手に入りにくい現在、日本での中世城郭論としては唯一の存在かもしれない。建築からの特異なアプローチ長尾重武の「建築家レオナルド・ダ・ヴィンチ」、経済学からの視点が面白い篠田雄次郎「聖堂騎士団E.T.C.
新しいところではちくま新書鈴木博之の「ロンドン」。集英社新書で、荒俣宏「万博とストリップ」。
興味の対象がバラバラで方向性がないのが素天堂の悪い癖なのだが、このリストもそうなってしまっているな。それにしても、新書というシリーズの性格なのかもしれないが僅かな例外を除いて、品切れが多いので若い方への紹介にもならないぞ。