2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「誤謬の博物館」 公式図録? 『ガストン・ド・ラトゥール』

この本は、持っていたことはあるけれど、読んでいない本なのである。なのに、勢いで面白いといってしまった。まあ、滅法退屈な『享楽主義者メアリアス』よりはいいだろうぐらいなつもりだったが、もしやっぱり詰まらなかったらどうしようというわけで、この…

塔三彩 時とところのアラベスク(五)

「河鍋暁齋展」1994以来の、「江戸東京博物館」、「よみがえる浮世絵−うるわしき大正新版画」展。展示品や催事特別展の善し悪しはともかく、意味のない地上通路の空白と威圧的なデザイン、がこの展示場を必要以上に敬遠させる要因だろう。今回も、車内の広告…

古本神降臨

ギャーッ! 数年振りの南部遊古会初日午前中。一階駐車スペースで、狂喜の血風が吹き荒れた。 普段お目にかかれないような本がゴッソリと居並ぶ棚。手に取る本が次々に手に貼りつく。何よりうれしかったのは、永らく幻だった『マンク』の初訳本『ロザリオ』…

時とところのアラベスク(四)

物心の付き始めは、宇宙少年だった。スプートニクの光跡を夕刻の空に追い、宇宙を飛ぶライカ犬の動向に一喜一憂する小学生であった。ガガーリンの「地球は青かった」やテレシコワの「ヤー チャイカ私はカモメ」に感動していた。彼らを大気圏の外という途轍も…

雑誌の魅力 新青年の残香(四)ハヤカワミステリマガジン 1967 5月号

小学校時代から読み始めていた『SFマガジン』や、他社の『ヒッチコック・マガジン』『宝石』に比べて、『EQMM』はコラムも大人向けで中学生にはハードルが高かった。もう一社からでていた『マンハント』は、中学生にありがちな、ちょっと違った興味で古本買…

時とところのアラベスク 三

先月、年に一度の映画館の帰り、気まぐれで木場から門仲へ足を延ばした。永代通沿いの喫茶店で、久方ぶりに、氷水を飲んででこめかみをキリキリさせた。お目当てだった古書店も休みだったし、帰宅しようと富岡八幡宮裏へ回ったら、境内で骨董市の開催中だっ…

0930  附記

多分、一生に一度の機会だと思う。 新築(といっても、今年でもう七年目だそうだ。)の「丸ビル」オフィスエリアへの入場が許された。最上階に近い高層部から外を見る貴重な機会だった。上記の、最後に残っていたはずの二件のうちの一つ、東京駅を見下ろした…

時とところのアラベスク 二

石造りであろうと、コンクリート造りであろうと、木と紙のイエで暮らしてきた日本人は、建て替えにまったく抵抗がなかったし、様式史を持たずにきた我々にとっては、古いものは不便なものでしかなかった。昔が見たければ、変色した一枚の写真があれば十分だ…

時とところのアラベスク

切っ掛けは、東京メトロニュースの今月号の表紙だった。 いつものようにモデルさんが、お店でくつろぐ絵柄なのだが、彼女の背後に目がいった。正確には背後の書棚の二段目、奇妙な顔が見える。その顔に赤い文字でdadaの文字が見える。これが、京橋にあった近…

蝋燭の燈では勿論なかった

藤原編集室の告知で知った〈ミステリー文学資料館開館10周年記念 トーク&ディスカッション「『新青年』の作家たち」に、早速応募した。この施設は、いままで、日下三蔵さんや山前譲さんのお仕事で名前は存じていたが、畏れ多くて敬遠していた。イヴェントの当…

凡愚と選良 長い夏休みを終えて

五年半を越える逼塞状況を堪えられず、足抜けをして得た、一ヶ月の長い休み。形容は悪いが瓢箪から駒で、お店の手伝いをすることになった。結果、約三週間を店主と相対することになった。 今までも少しずつ聞いたことがあったが、折角の機会でもあり、店主の…