蝋燭の燈では勿論なかった

藤原編集室の告知で知った〈ミステリー文学資料館開館10周年記念 トーク&ディスカッション「『新青年』の作家たち」に、早速応募した。この施設は、いままで、日下三蔵さんや山前譲さんのお仕事で名前は存じていたが、畏れ多くて敬遠していた。イヴェントの当日、迷いたくないので一度予備的に覗いてみたかったのだ。
有楽町線は池袋の先、要町下車は始めて。勝手に光文社は音羽だとばっかり思っていたが、大分前に移転していたらしい。要町の駅を出て大きなお寺を通り過ぎたところに資料館の表示があった。先月まで行われていた島田荘司展の写真が大きく出た看板の脇に、資料館の入り口があった。受付で所定の手続きをして館内に。
地下に置かれた低い天井の小部屋に書架がギッシリと並び、木製の机で日下さんたちが、触るだけで崩れるような仙花紙本を、裸電球の下で開きながら、鉛筆でメモをとる。なんということをイメージとして持っていたから、明るい部屋と広いデスクにちょっとたじろいだが、開架に居並ぶ貴重書・誌に静かな興奮が涌いてきた。
収蔵書から、昭和八年十月号の『新青年』を選んで、今回の新刊第九号で引用したコラム記事「アスファルト」を三十年ぶりに確認する。改めて、直接確認できるありがたさを味わい、いざとなったら、ここに来ればという確信を貰った。勿論下調べを十分して参照文献を決めてくる必要はあるだろうが。