ラインの伝説、二種類あった。

泡坂妻夫引退公演

泡坂妻夫引退公演

新刊刊行の大山を越えて、比較的のんびりの日々である。M山先生のお誕生会や、H多さんの写真個展でS保さんや、S田さん、I井H生さんとと久しぶりの濃い話をたくさん。編纂されたS保さんからわけていただいた東京創元社刊『泡坂妻夫引退公演』は、勿論内容もすばらしいが、懐かしい段ボール貼り箱造りに、別紙和紙貼りの書題という時代離れした装丁に大興奮だった。これは本好きにはたまらない。二分冊のフランス装の本編、どうかお持ちの方はカヴァー裏をご覧ください。この気配り大好きです。
などなど、いろいろ楽しくやりながら、文学フリマに向けて品切れ版のバックナンバーのPDF化を進行中。ふと思いついて新刊「まぼろしたてものII」のもう一つのテーマ「コロン寺縁起」との関係が気になって、ネタ本の『ラインの伝説』をググってみた。お目当ては前に持っていたはずの吾孫子豊訳本の初版と、今回参照した本の記述が違っているようだったのでそれを確かめたかった。
ところが調べてみると『ラインの傳説』1962という、ちょっと吾孫子本より前に出た同名異本が浮き上がってきた。発注して取り寄せてみると、その本も知っていたのである。さらっと読み流していたので、すっかり忘れていたのだ。虫太郎いうところの「sechstempel」の元ネタでも探そうと、覗いたことがあった本だったし、今回買い直した松宮順著の方を覚えていたのである。だから、記述内容が違っていると思ったのだった。

実際照らし合わせてみると全く方向が違い吾孫子本『ラインの伝説』は、すっかり原著の遂語訳で、エピソード数も多く記述もたっぷりとした物語的なのに対して、松宮本『ラインの傳説』はエピソード記述は簡略で、どちらかというと民俗学的な民話収集と分析に重点が置かれていた。エピソードは勿論何話か重複はしているが、はっきり別なものだった。でも、両方面白いから二冊とも手元にあっていいと思うことにする。
ライン河幻想紀行 (岩波文庫 赤 531-9)
ライン川といえば、今号の主役ユゴー岩波文庫ライン河幻想紀行 』も楽しい。ユゴーの文もだが、各所にちりばめられたユゴー自身のデッサンは見物です。文中に虫太郎語彙の「クミエルニツキー」も登場します。
気になっていた疑問が二日かけて解けたのだから、これからは、バックナンバーのPDF化に邁進しよう。などといいながら、今日も柳橋方面に出没の予定である。