アルフレッド・ジャリ ISBN4891764945  

 八重洲ブックセンターちくま文庫ジュリアン・グラック「シルトの岸辺」を買いに行ったついでに、1Fの幻想・ミステリコーナーを覗く。
おきまりのコースで、そこでほとんど買い物をする事はないのだが、分厚い新刊が自分を呼んでいた。副題が「『ユビュ王』から『フォーストロール博士言行録』まで」という、『アルフレッド・ジャリ』の評伝だ。その書価に一瞬躊躇したが、たまたま銀行へ行ったばかりだったので、「こんな本をおれが買わなきゃ、だれが買うか」とばかり、つい手を出す。
 版元はついこの間「エロスの祭司」というピエール・ルイスの評伝が一部で話題だった水声社。五三〇ページという分量にもかかわらず、取り上げているのは三〇数年の短い彼の生涯の半分に過ぎないという。あとがきによれば、勿論後半生も執筆予定に入っていたそうだが。
 気になるのはあとがきにある(今まで彼に対して好意的だと思われていた)ラシルド夫妻に対する異議申し立てだが、今まで日本での紹介が、伝記を含めてそのフィルターを通してしかされていなかったのだから、きちんと作品を読む事ができなかった日本の読者には貴重な資料となるだろう。しばらくは、これにかかりっきりになっちゃうかもしれない。
 返す返すも残念なのは「超男性」をのぞく後期の未邦訳作品が当然の事ながら考究の対象から外れている事だ。
書こうと思っていた春陽堂版「乱歩全集。についてはまた今度。
アンテナにジャリの項目を復活。