LE REVE 正進堂 〈忘れられない本たち〉

sutendo2005-06-12

渋谷 宮益坂 喫茶店トップ(ここでは青山通り沿いのある本屋さんで〈トンデモナイ値段で〉 買った「the YELLOW BOOK」13冊揃を、席に着く間も惜しく開いて点検したこともあった、コーヒーはもちろん、サーディントーストがおいしい店)を通り過ぎた道路の向かい側、坂をあがりきったところにその本屋さんはあった。軒下はおきまりの見切り本の棚、ガラス戸を開けてはいると、入り口付近の両側は文系の和書。奥は洋書が並ぶ。さらに真ん中の島は雑誌と文芸関係和書だったかな。昔は帳場が奥にあったと思う。その帳場に向かって右側の通路に箱が並んでいてその中が、何があるかわからない宝の蔵で、戦前の雑誌や、単行本が、ジャンルも何も一緒くたに入って素天堂を待っていたのだった。
あのころはどこの本屋でも本探しに手を埃だらけにするのが当たり前だったから、正進堂だけが特別だったわけではないが、その底に沈んだ自分にとっての宝物を探し出すには、手の埃なんか気にしている余裕はなかったものだ。そんな中で忘れられない筆頭といえば、子牛だったろうか手触りが柔らかく、その感触が官能的でさえあった革装本、十字架の聖ヨハネの「カルメル山登攀」、あれは何語だったのかなあ。もちろん読めもしないものだったが。それから、クロソウスキ「ロベルトは今夜」挿絵入りNRF版初版の通し番号付き復刻。1926年版ピエール・ルイスアフロディットA.CALBET挿絵入り」←これはあの膨大な「SADE BIBLIOGRAFIA PIERRE LOUYSコレクション」には入っていない。その挿絵の1枚は、白水社版小松清譯同書の口絵にも使われている。そして、どこに行ったのかとうとう行方不明になってしまった、同じ頃に雑誌形式で発行された挿絵入りエミール・ゾラ「LE REVE」、表紙はカルロス・シュワッブのペン画を使っていたが、中の挿絵は別の人だった。今でもほしいと思うのだが、もうきっと無理なんだろうなあ。そして極めつけは(これは勿論見切り本ではないけれど)、待って待ってやっと買った「Dictionnaire raisonée de l’architecture française du XIe au XVIe siècle, 10 voll., Paris 1854-68」。ヴィオレ・ル・デュックの見事な挿絵入り装幀済み完本。これが今現在手元に残る素天堂のお宝かもしれない。
読めもしない外国の本をいくら持っていても仕方ないようなものだが、まあ絵本のつもりで眺めているのです。今回の絵は唯一残っている雑誌版「LE REVE」の挿絵です。ちょっと甘いけれど、作品の内容にふさわしいものだったと思います。