共妾學校? 巧智文學 -東西共通の趣味文学- 

  和田信二郎著 明治書院 昭和二十五年一月刊

本当に、こんな本を読んでる場合ではないんだが。しかも感想を日記で上げる時間がどこにある、状態なのだが、しかし、これは凄い。「言語遊戯の系譜」「ことば遊び辞典」の大先駆。本邦古文献から漢籍、西洋の広告まで、知的遊戯としての文学の集大成。かの加藤郁乎絶賛というのも当然だ。洋に関しては、ルイス・キャロルのナンセンス詩や、ホッケの『文学におけるマニエリスム 言語錬金術ならびに秘教的組み合わせ術』に明らかだが、国内に関しては加藤の指摘通り、キチンとしたかたちの文献は未だにない。まあこれについては後程ということにして、いくつか著者が語っている、小さなエピソードの一つを紹介する。
著者は文部省の職員で、その頃、訪ねてきた地方の女学校の校長先生に聞かれた。「妾という字にはどんな意味がありますか」「まあ、古くは、女性が自分に対して“わらわ”というときに使いましたが、今ではその差別的な語感から使わないようにしているのですが。一体いつ頃の話ですか」「いやつい先ほどのことです。神田から大手町に抜ける途中で『神田共妾學校』という看板を見たのです」「共妾? それは違います。立と女がくっつきすぎて、妾に見えたのでしょう。そこは共立女學校なんです」うーん、やっぱり時代を感じてギャグものどかだなあ。