無理矢理〈センチメンタル・ジャーニー〉での拾いもの

sutendo2007-03-14

 『報道写真 十一月三日の記録 カメラ毎日別冊』 1956刊
K氏が外出する。その近所?に最近K氏が見付けた、いい本屋さんがあるというので、後をついていくことにした。そのお店は根津から池之端方向にちょっと歩いた路地にあった。表に並ぶ均一本が面白いのでジックリ眺め、まず、ツェッペリン伯の伝記をピックアップ。その横に置かれた、ちょっと変わった毛色の放出本の中に、青柳有美の本がある。凄い放出本だと思ったら、今になって考えれば、改装中の棚の本だったのだろう。昭和初期の文学、風俗にターゲットを絞った、なかなかマニアックな品揃えにちょっと興奮しながら店内を一周する。美術デザインや演芸ジャンルにもこだわったおもしろさが匂う。ガラスケースの中にカヴァーつき『世界大都会尖端ジャズ文学』が何冊かまとまっている。じつは、入った瞬間、天袋に『JAZZ・ブロードウェー』のこわれ本が眼について、あれっと思ったのだった。そんなのは今の素天堂には買えるはずもないので、涙をのんですっと流したのだが、この本だけは手にとった。帯に〈日本版の“ファミリー・オブ・マン”〉とある。日本全国のアマチュアによる昭和三十年十一月三日のルポルタージュだという。その中に名張での「乱歩碑除幕式」の模様があった。

『探偵小説四十年 下』で確認すると、掲載写真が違う。どうも掲載時に割愛されたものが『四十年』の方に載せられたもののようである。多分このショットでの被写体がこれだろうと思われる。

なかなかの拾いものをして機嫌良く池之端の通りを上野方面に向かう。
向かうのだが、例によって素天堂が気まぐれをおこし横道攻撃を開始する。まっすぐ行けばいいものを、上野動物園を過ぎて、「岩崎邸」方面に入り込んだところから、道順が混濁しはじめた。しかもそこは普段K氏の出没する、何も休みの日にまで通りたくもない辺りなのだという。そのうえ、曲がった地点が早すぎて、目標よりずっと西の辺りにでてしまい、そのうえ予報にないにわか雨まで降り出した。半泣きのK氏を、彼女の通り過ぎてきたらしい関係の施設を、あっちこっち無理矢理つれ歩いて、やっと、目的地近くの「湯島聖堂」に到着した。あれだけ、お茶の水付近をうろつきながら、入ったことのない「聖堂」は横浜の「孔子廟」とは違った趣のある世界であった。
用件先に向かうK氏と別れ、ひさしぶりにアキバに突撃した素天堂が、ショッピングバッグ一杯のレンタル落ちヴィデオを買い込んだり、用件の終わったK氏と待ち合わせて入った「万世」の素敵なカフェバーについては、また、別の話である。