梅が見たい

そう言いだしたのは自分なのだが、心づもりでは近所の天神様でいいと思っていた。それを、遠く離れた〈と思い込んでいた〉梅ヶ丘はどうだと言ってくれたのは、K氏だった。
実際に路線図を見てみたら、目的の羽根木公園には、都営新宿線で一本の、京王線明大前まで行けばよいことが判って、素天堂は同意した。行くに際して、その周辺のリサーチを欠かさないK氏の事前調査は綿密きわまりないものであった。
その一日についてはK氏のここを見て頂くとして、何軒かの素敵なお店を見つけられたのは彼女のお陰なのである。最初の目標である、東松原への道筋で、偉そうに東急世田谷線の話をしながら、実はそれは京王井の頭線の踏切であったことを書いてないのは、多分、武士の情けなのだろう。
最初に入ったN書房は、私鉄沿線の一般客まで意識した幅広さを持っていながら、いくつかのテーマを決めてしっかり品揃えした良いお店であった。店を出て腹が空いたと騒ぐ素天堂を宥めすかしながら、東松原の駅前を歩いて見つけてくれたのが、この店。このブログでの紹介通り凄かった。満腹して羽根木公園へ向かう。
〈梅は咲いたか〉の唄の文句ではないけれど、寂しい二、三分咲きの花模様とは裏腹な「うめまつり」の盛況だったが、おいしいカレーで満腹なので、模擬店で一緒に騒げなかったのがちょっと寂しかった。でも花札ではないが、梅のえだに鶯が来たのは、なんだか儲けたような気がした。
そこから向かった豪徳寺の路地にあったG古書店は、店外の見切り本でさえ、選び抜かれていた。ジックリ選んで二冊程手にとって中に入ったら、当然だがその品揃えの水準の高さに驚かされた。残念ながらあまり買い物はできなかったが、建築関係の充実振りは物凄く、ここで書いた、『SD』の現物が置いてあったのには唖然としたが、何とも懐かしかった。
一旦豪徳寺の駅内でお茶と休憩の後、下北沢へ向かう、目的の二軒のお店でもそこそこの買い物をして、明大前へ戻りノンビリと帰宅した。数少ない週中の休日、結局梅は口実の、古本三昧の一日であった。