ミステリ評論五十年 権田萬治さんの半世紀をお祝いする会

幻影城の時代」に書いた、たった数行のご縁でタイトルの会へご招待を頂いた。権田さん自身とのご縁は、ミステリ資料館での「逍遙」本寄贈のお礼の言葉、唯一回。弱輩の身で出席もためらわれたが、貴重な経験でもあり、ありがたくお受けした。
当日少し早めに大江戸線牛込神楽坂に到着。駅周辺地図で会場を確認する。そこに横寺町の文字があった。どうやって時間調整しようと思っていたところだから、足穂の歩いたかも知れない町を散歩するのも一興かと、会場の反対側の小さな袖摺坂の階段を上がってみた。盲滅法に歩き始めたが、飯塚縄のれんの名前を思い出して、もしやと思ったが、うろつきながら酒屋を探してみた。飲み屋はなかったが店のあとらしい「飯塚」の表札のかかった家を見つけた。勝手にそこを縄のれんの跡地に決めて神楽坂のメインストリートに出る。喫茶店で一休みして、会場を目指す。
正装したカップルが前を歩いていたのを目標に、会場に入りかけところで、止まったタクシーから降りた方を見た。何と、「幻影城」旧編集長島崎さんだった。前回、喧噪の中でバックナンバーをお渡ししたにも拘わらず、お声をかけると覚えていてくださり、調子づいてまたもや失礼にも、路上も顧みず二冊をお手渡しした。お世辞でなく喜んで頂けたのは、ありがたいことでありました。署名して入場すると、会場は既に立錐の余地もなく、島崎さんもお忙しかったので、失礼ながらも、素天堂にとっては僥倖の出会いだったのである。
東京創元社小浜さんの司会で開会が宣言され、事務局から新保博久さんの権田さんのご紹介に始まって、発起人代表森村誠一氏の真摯なご挨拶があり、権田さんご本人による挨拶が続いた。島崎さんの音頭の乾杯から始まった、歓談も笑い声が絶えず、終了まで本当にお人柄を顕す、暖かさの充満した素敵な会でありました。
ご挨拶の中で、生前葬などという、スリリングなジョークも出ましたが、中休みに読まれた、高校の同級生だという、画家中西夏之さんの祝電が読まれた時、司会の小浜さんが弔電と言い間違えられたのに会場中が大爆笑。いかにもミステリものの集まりにふさわしい、言い間違いでありました。
素天堂自身も、壁の花で終わろうと思っていたにも拘わらず、「綺想宮」の感想で足を引っ張ってしまった芦辺さんの温かいお話しを始めとして、SRの会員の方等たくさんの方からお声を頂き、影の会の森下さんからは二次会まで誘って頂き、神楽坂縁の作家、都筑道夫話で盛り上がれたのもうれしかった。