書きたいことが多すぎて

新年この方、暮に出会った『飛行機全書』以来の足穂本『非ゆうくりっど幾何學』、数十年ぶりに読み返したバルザック『麁皮』の感想、現れた一九六九年の美学校講義のノートについてなど、話したいことはいくらでもあるのだが、どれも自分のある部分をさらけ出さないと書けそうもなく、結局それぞれが宙ぶらりんで停滞したままである。
そして書肆「なないろ文庫不思議堂」店主田村治芳の死、いきそびれた昨年十一月の美学校「今泉さんを語る会」での彼の様子からある程度、予感はあったにしても、やっぱり早すぎはしないか。何か感想を書けるほどの個人的な付き合いもなく、本好き同士で四十年、向こうは本好きが高じて古書店を開き、こちらはいわばあんまり出来のよくない客として、会えば話す程度の付き合いだった。その田村のことも、客の一人として、思いっきり語りたいこともあるのだが。
何年ぶりだろう、とにかく時間がほしい、とおもうこの飢餓感の襲来は。