オネエサンでおもいだしたこと

いまでこそ、初老の爺など触ることもできないが、二冊の『平凡パンチ女性版』からはじまった、創刊当時の『アン・アン』は、尖りまくってキラキラしていた。無名だが凄腕のカメラマンや、まだデザインスクール在学中の若手とも呼べない、イラストレーターの卵たちを使って、とても女性誌とは思えない編集だった。勿論服飾デザイナーも。
そんな初期、澁澤さんが欧州旅行のため、連載中だったペローの翻訳「長靴をはいた猫」休載になって、穴埋めで渡辺温の作品を読んだ覚えがある。松山俊太郎氏が代役に入って、作品を選定したものだと、後で聞いた。その一本が「かわいそうな姉」だった。ふしぎな語りとサープライズ・エンディングで印象に残っていた。のちに薔薇十字社で豪華な作品集が出たが、高価で手が出なかった。もっとも、結局後から値が付いて、新刊定価が一番安値であったのだが。創元推理文庫で作品集『アンドロギュノスの裔』を手にしたとき、ちょっと思い出したエピソード。