こうがいさんぽ

実際には一週間おきにあるのだが、病み上がりの月という特殊事情から、なぜか久しぶりの2連休のような昨日、新刊作業も難産ながら無理矢理一段落させて、江戸川を渡ったお隣の市川まで出掛けた。
地元の都営新宿線から終点本八幡まで行き、そこで荷風行きつけだった「大黒屋」。午前中時間を作ってくれたK氏とゆっくり昼食をとると、京成各停の運行になれているK氏から、目的地まで歩こうと珍しく提案があった。どうやら身体も慣れてきているので、賛成して線路沿いを二つ先の市川真間まで歩き始める。踏切を渡り損ねたり、区画がわかりづらかったりで結構な時間をかけたが、お目当ての神社の前の古本屋さんに到着した。
本屋探訪に命を注ぐ方のブログの紹介であった、新規開店の「即興堂」さんである。いかにも初な綺麗なお店だし、お店のブログも力が入っていて入りづらそうに思ったが、店頭の見切りの箱で二冊掴んだら二人とももう止まらない。美術建築関係の良書が光った良い棚に眼の色が変わった素は結局、安いところを七,八冊。K氏も素の見逃していたものを二点、買い上げとなった。余裕があればもう少し長居をしたかったところだが、二人とも次があるので早々に引き上げた。雑談の中から引き出した情報では、店主の方は素天堂が三十年以上に渉って、お世話になってきたあの店外の棚が有名なお店のご出身だそうである。いかにも筋の良い楽しい品揃えに、同じ町内の五角形の本屋さんに行くのも忘れて、軽い荷物を背負って帰ったのである。特に数冊あった洋書の一冊は、初版が十九世紀末の城郭物語「The romance of the feudal châteaux 1899/1926」であり、今、ここで手に入ったのがありがたいという、稀な幸運の一冊なのであった。久しぶりの古本天使の市川出張版降臨であった。

ネット初版口絵から、この絵は1926版では挿し替わっている
バスに乗るK氏と別れ、総武線快速錦糸町までついたが、店に入って休む気にもならず歩き始めたものの、中途のコンビニエンスストアで、偽缶ビールを買い込み、公園のベンチで色づき始めた紅葉を眺めつつ、収穫本のおさらいをしたのであった。不思議なもので、いい買い物があると、どんなに歩いてもちっとも苦にならないと言うのは、なんとも古本者の性なのであろう。