新本格スタートから いささか旧聞

おととい、1年ぶりに弟宅を訪問。年始のスケジュール多忙の中、歓迎の一席を設けてくれた。うまい中華料理と、その後の酒飲み比べが楽しかった。翌日は夫婦とも外出なので、早めに退散。姪御の運転に送られて駅前のブックオフへ。大きくて品揃えがいいので結構お気に入りの一店である。グルッと回って、特別な本を二冊手にする。
特別とはいっても素にとっての思い入れであって、一般的には問題にもならないかも知れない作品、綾辻行人十角館の殺人 新装改訂版講談社文庫2007戸川安宣さんの解説付き。竹本健治狂い壁 狂い窓 綾辻・有栖川復刊コレクション講談社ノヴェルズ2007東雅夫さんの解説付き、の二冊。いつもなら買ってからすぐ本棚行きなのだが、今回は特別な本の特別な解説が読みたくて着替えも早々に解説を読みふけった。騙される歓びに渇いていたあの頃、出会えた数少ない作品との再会だった。勿論前者は途切れることなく版を重ね(五十刷!)ていたし、後者も文庫化されて、手にしようと思えばそんなに難しい存在ではなかったのだが。今回は編集の妙に惹かれて買い直しの誘惑に負けた。
発表から三十年近くたって、いつの間にか定着していった中での、新本格ミステリというジャンルを、歴史として見直す時期に入ったのかも知れない。二冊の解説は、視点の新鮮な、編集者というもう一つの作り手たちの貴重な証言なのである。