冬の妖精 クリスマス・イヴ

有名で、見たことのある作品の実物を確認に行くのも、展覧会へ足を運ぶ楽しみだが(今回でいえばリチャード・ドイルの諸作)、知らなかったりわすれていた画家たちを再認識させてもらうことが一番楽しいことである。三鷹美術ギャラリー「フェアリー・テイル展」。
今回の展示で一番惹かれたのがこの作品、john anster fitzgerald(1819-1906)『christmas eve』。

クリスマスの贈り物を妖精が運ぶという言い伝えが、英国にあるのかどうか日本人にはわからないのだが、妖精といえば、春や『真夏の夜の夢』に表される夏を思い浮かべることが多い。だから、屋根に雪の積もった茅屋に群がった妖精たちが、まるで雪の精のように真っ白になって贈り物を袋から出して、煙突に入れているこの絵は、一瞬彼らが何をしているのかわからないくらいだった。
  
家に帰って、改めて調べてみると、同じ作家のこんな素敵な『真夏の夜の夢』のアリエルの絵があった。きびしい冬の妖精に対して、花の茵で眠るアリエルの表情は優しい。月を背にした蝙蝠の姿も興味深いが、これも展示がなかった。
九年前の2003年、北浦和埼玉県立近代美術館」までいって同名の展観を見た覚えがあるが内容は大分異なっていたように思う。雨で人出の少ない朝、丹念にゆっくり会場を回ることができた。
千葉の「滝口修造マルセル・デュシャン展」、鎌倉の「藤牧義夫展」、池袋の「Le Carre Curieux」での至芸と続いた、春先の楽しい行事もこの三鷹での展観を持って打ち止め。今月一杯はきっちり仕事するぞっと。