観られなかった作品について ユベール・ロベール−時間の庭展

去年の暮れ、だったか西洋美術館の前を通りがかった時、休館中の表門に「ピラネージ『牢獄』展」のポスターが貼られ、併設で「ユベール・ロベール」という耳慣れない画家の展観が予告されているのを見かけた。素天堂のように古い建築画にでも興味がない限り、まず日本で聞くことの出来る名前ではなかったので、それがピラネージの添え物としての、デッサンだけの展観であったとしても大変嬉しかった。
時間を作って出掛けてみたら、まさか、こんな大展観になっているとは思っていなかったのでもっとビックリした。さらになによりだったのは、ピラネージやフラゴナールなど関連の館蔵品が多数展示されていたり、常設でも関連の作品が取り上げられたりしていたことだ。西洋の範囲を拡げ、徐々に、ルネサンス以前を取り込んでいる、館の姿勢が感じられた展観でもあった。
彼の作品を直接観るのは、大昔、パルミジャニーノに逢いにある街に行った時、その造形アカデミー美術館の一室で、見かけて以来の経験である。今回の「時間の庭」と題された構成も、ユベール・ロベールの作品の正鵠を射ており、ゆったりとした会場構成の中で、充分作品世界に浸ることが出来た。ありがたくも幸せな出逢いであった。
それ以外にも、ネット上でみて気に入っていた作品に、「ルーブル」のギャラリーを描いた数点の作品があった。それは勿論今回は入っていなかったが、こんな作品。一つは理想像、一つはその廃墟。


それについても、ルーブルが美術館として成り立った時期の証言として、今回の展示を補完するように、図録の解説に懇切な研究が掲載されており、充分な目配りがされているのもありがたかった。