『黒死館逍遙 別巻 まぼろしたてもの考 2』出来ました

いろいろ手の内をさらしまくった今回でしたが、本日無事到着。今号はサブタイトルを「『ノートルダム・ド・パリ』を読む」としました。ゴシックロマンを出発点とした建築幻想の流れの中で、特異な位置を占めながら語られることの少なかった、それどころが再話の改竄による読んだつもりの誤解が、作品自体の形体まで変えてしまった不幸な作品を今回その基礎から読み直しています。
ノートルダム・ド・パリ』は、ディズニーのアニメーション『ノートルダムの鐘』や何回も行われた映画化で名前はポピュラーですが、『レ・ミゼラブル』などに比べると入手もし辛く、一般的に原典を読まれる方は少ないようです。本作の物語としての起伏や人間的関係の複雑なおもしろさは勿論ですが、ヴィクトル・ユゴーは、ゴシックロマンの先駆者たちが、中世という時代や、建造物を装飾的に扱っているのに対して、当時の多面的な時代相と建築に、真正面から向きあっています。
この作品の中でユゴーは、多くを割いて彼独自の建築論を展開しています。今号では、ユゴーの建築論を手がかりに、さらに遡って、建築幻想の源をたどる旅をしてみました。『旧約聖書』といい、中世という時代といい、名前だけが独り立ちしているような気がします。なんとか面白く読んで頂けるようエピソード本意の物語風にまとめています。

まぼろしたてもの考 2」内容は以下の通りです。
序説「コロン寺縁起」再訪 / 一、老いたる女王讃歌『ノートルダム・ド・パリ』を読む 1
二、淵源としての聖書 / 三、歪んだ鏡像 中世宗教芸術 / 四、カジモド 伽藍の生霊『ノートルダム・ド・パリ』を読む 2
付録 資料 「これ、かれを滅ぼさん」第五篇 第二章
定価は今回やむを得ず、800円となりました。数千年にわたる長い旅路をまとめるのに「素天堂文庫」最厚の130pを必要としました。どうか、拙い一冊ですが、従前同様ご愛顧願います。初売りは八月十日、東ヤ39a 。通販の受付は同日以降となります。
幸い現在電子版に最新バージョンがあります。有料ですが、興味をお持ちの方はご覧頂きたいと思います。