大正の小さな夢から 弥生美術館

前日の千駄木に続いて、今日も千代田線根津で下車。一軒新しい本屋さんを覗いてから、目的の美術館へ静かな住宅地を通り抜ける。いつもは上から降りる感じなので、若干不安だったけれども表通りへ出てみるとちょうど夢二美術館の看板に当たる。

弥生美術館で開催中の「魔性の女」挿絵(イラストレーション)展はその隣。思ったより立て込んでいて、ミュージアム・ショップも賑わっている。
展観は橘小夢の耽美あふれる作品群から始まって、鏡花、谷崎、乱歩などの作品の挿絵に描かれた女たちが全館を埋め尽くす壮観であった。個人蔵も多い充実した作品群は、小村雪岱描く邦枝完二作『お伝地獄』の下絵、水島爾保布描く谷崎潤一郎作『魔術師』の原画などなかなか見られないものも多数が含まれた貴重な展覧である。なにより乱歩のおまけで『少女クラブ』連載の異色作『魔法人形』、石原豪人の挿絵が一番うれしかったかもしれない。

橘小夢/画「刺青」木版画 大正12年(個人蔵)展示ホームページから