奇跡の再会?『アルプス建築 タウト全集第六巻』

ユーラシアの旅から、江東の場末に戻って日々若干地味な語彙探しと、ネット上での庭園造りhttp://www.playdom.com/games/gardensoftimeに夢中の日々だった。英語もできず、記憶力も衰えているのに何とも無謀な挑戦だったが、初期の「SIMCITYのようなもの」と簡単なゲームの組み合わせとで、資金を作りながら歴史上の建造物を箱庭の中に作っていくゲームだ。
そんな時古書展の目録が送られてきた。冒頭のページに久しぶりに気になる本があったので、当選の確認がてら、小雨の中南部古書会館「五反田アートブックバザール」に出向いた。ゆっくり出かけて会場へ入ってみるとまずまずの入りだが、帳場は手が空いているようなので、注文の確認をした。ところが、どうやら手違いで登録されていなかったのである。
とはいえ、ガラスケースの中にその本はまだあり、なんとか二日目の朝まで見逃してもらっていたようだった。聞いてみると、帳場の中では話題になっていたそうだ。稀覯本と言うほどではないけれども、まあ、知る人ぞ知る存在ではあったと思う。内容については既知のものだったので、確認もせず。預けて場内を一巡した。図録を数冊買って一緒に包んでもらい、銀座の奥村書店に向かった。

いつもの通り、整理された棚と元気なご主人に出会ってほっとした。荷物を手渡しくつろいで、ご主人の「いつも出かけていらっしゃいますねえ」のからかい半分の言葉に苦笑いしながら、今日の戦果を開いた。「育成社弘道閣」から戦争真っ盛りに出版された、紙質も貧しい黒ずんだカバー付きの大型本を取り出しながら、その本も、大昔処分した中に混ざっていたことを思い出した。
それなりに入手に手間取ったものなので、どこで買ったかも覚えていた。神保町というより、小川町に一軒だけあったG堂の高い棚から抜いたのまで覚えていた、「自分の持っていたものよりきれいな気がする」などと話をしながら見返しを開くと、なんとノドにそのお店のタグが残っていた。いかな由緒あるG堂とはいえ、そうそう何度の扱える本ではないと思う。

大昔処分してもらったときに、建築関係は一括して専門の本屋さんが落札したようだと聞いてはいたが、まさか十年の時を経て、巡り巡ってまた手元に戻ってきたとは思いもしなかった。勿論、あるところにはある本だし、現地なら復刻版もあると知ってはいるが、そこはそれ、日本における幻想建築の基本文献である。やっぱり再会は嬉しい。久しぶりの古本天使の降臨を喜びたい。