ねこの(トンデモナイ)恩返し 浅暮三文さんのネコ話

 過日、某酒房で同席した際、こんな話を聞いた。あんまり嬉しいのでご本人の了解を得て、ここに書きます。
ずっと前、浅暮さんが、広告業だった6畳一間にすんでいた頃の話。
 仕事から、疲れてかえったら1匹のネコが紛れ込んでいたそうな。なんともかわいそうなので(うろ覚えなのだが、その日は雨だったかもしれない)仏心で住まわせてやったら、何と6匹も子猫を生んだ。
 やむを得ず、キャットフードなど揃えて面倒を見てあげたのに、何と母親は授乳が終わったら、子猫を置いて出て行ってしまった。その日から浅暮さんは親代わりで、ネコ出口を拵えたり結構一生懸命、育児を続けた。そのうちに、1匹2匹と家を出ていく中で2匹だけが最後まで残った。
 結構いたずら好きのネコどもで、室内にあった炊事場の蛇口などもいじくって遊んでいたんであるが、まぁ大目に見ていたという。
それがある日、仕事で遅くなってドアを開けたら、ネコたちの様子がおかしい。炊事場の上で、妙に窮屈そうに縮こまってこっちを見ている。
 浅暮さん、訝しがりながらも、部屋に入ってビックリ、部屋(勿論、畳)中が水浸し。彼らは流しの上に避難しておったのである。
で、原因であるが、彼らは蛇口で遊んでいるうちに夢中になって、蛇口についていたゴムホースを流しの外に出してしまったのである。そこからほぼ1日、部屋の中に水が垂れていたのだ。
 感慨深げに浅暮さんがおっしゃってましたが、ネコは蛇口は開けられるが,閉める智恵はなかった。
 やむをえず、部屋中のしめった畳を紙やなにかでとりあえず拭きとって、泣く泣くその湿った布団で疲れを休めたのだとおっしゃっておりました。怒るに怒れなかったのは、その時の子猫たちの自分たちが悪いことをしてしまったという、本当にすまなそうな表情のせいだったとか。それにしても、その時の、ネコたちと向かい合った、浅暮さんの途方に暮れた表情が目に浮かぶようです。
 勿論浅暮さんのお話はこの何倍も面白かったのですが。乱文お許し下さい。