ウッドハウスのこと

真田啓介さんの「P・Gウッドハウス邦訳書誌」http://www1.speednet.ne.jp/~ed-fuji/X2-wodehouse.htmlを拝見して、眠りかけていた“ウッドハウス熱”が再発した。
 自分のユーモア文學好きの源泉は、怪奇・幻想ものと共に中学校の図書館にあった東京創元社の「大ロマン全集」だった。ケストナーの大人の童話「雪の中の3人男」「消え失せた密画」やクールトリーヌのコントに引き込まれて以来のことだ。そういえば「第二の顔」もそうだった。「ポーゾール王の冒険」とかね。
 その後筑摩からでた「世界ユーモア文学全集」で「マリナー氏ご紹介」「マルタン君物語」のカップリングを知った。勿論エイメも大好きになってその後翻訳をほとんど揃えるくらいだったが、1番気に入ったのはウッドハウスだった。
恋愛小説家の叔母の遺産を引き継いだ硬派のミステリ作家(売れてない)甥が、条件であるその叔母の家に暮らすうちに、叔母の作品の世界にドンドン引きずり込まれていく「忍冬が宿」とか。面白かったなぁ。
 早くからの紹介にもかかわらずウッドハウスが日本では決して幸福ではなかったように感じられる。
たとえば、同じ全集でのカップリングでありながら「マルタン君物語」は文庫化されているのに、である。カミだって「エッフェル塔の潜水夫」のナンセンス長編が二度も文庫化されているのに、である。
酒場でのホラ話といえば「白鹿亭奇譚」の遠い先祖といっても良い、あの大傑作が文庫にならないとは。ミステリでいえば同じ作家の「ジーブス」シリーズだって「黒後家蜘蛛の会」とつながっているじゃないかと思う。
あぁ、ウッドハウスが読みたい。