今更ながら「ゴシック・リヴァイヴァル」 ASIN4000089730 

 18世紀から19世紀にかけて歐羅巴を席巻した“ゴシック・リヴァイヴァル”という現象を、当時の基本思潮から源流としての中世、現代の文芸、エンターテインメントにおける残響までの大きなスパンを著者長年の研究結果で跡づけた貴重な文献。
 岩波書店刊行の叢書、「岩波 世界の美術」シリーズの1冊ということでシンプルな装本(素天堂は大好きですが)だし、配本部数も限られてるだろうし、書店で並ぶ棚のせい(美術コーナー)もあって、ほとんどのゴシック・ロマン愛好者の目にとまっていないのではないかと思う。知っていても敬遠されてるかもしれないのだが。
 それに刊行が昨年8月下旬、最早旧聞に属するのだが、残念ながらミステリー関係では、現在でも葵さんとおっしゃる方のコメントがあっただけ。

お値段が少々お高いのも頷ける、素晴らしい図版が満載♪ 文章を読まずに、日がな一日 ゴシック建築の写真ばかり見て妄想に耽ってしまいそうで怖い・・・。

http://homepage3.nifty.com/nuizan/books16.htm
 美しい写真やイラスト満載で本当にその通りなのだが、文学、美術との絡み合いで変動する建築ばかりでないゴシック・ロマンに関する目配りも愉しい。なにしろ、スージー・スーまで出てくるのだから。
 それにこの分野を語るに際して忘れることのできない「建築と世紀末」ASIN4794937229という先駆的名著を持っている鈴木博之氏をメインとする訳文も読みやすく、あの国書刊行会版ゴシック叢書中の名アンソロジー「城と眩暈」も入手困難になりつつある現在では「日本語」で読めるゴシック・リヴァイヴァルの本格的解説書が本書であるのは本当に僥倖といえるとおもう。