五反田 奇妙な町の感傷的逍遙

先日、薄い縁にもかかわらず、ある方の訃報に接して桐ヶ谷の斎場へでかけた。
都営地下鉄五反田駅を出て、国道1号線(第2京浜とはもう誰も呼ばないのだろうか)を戸越方面へダラダラ坂を登ってゆく。いくつかの交差点と無骨な高速道路のガードを越えて10分以上歩いていると、五反田という町の奇妙な構造に思い至る。先ずこの町を二つに分けるのが山手線の五反田駅、その内側は最近話題になった江戸時代からのお屋敷町が品川目黒の方へ広がり、駅前とその外側、東急池上線五反田駅周辺から戸越方面には新興のオフィス街と場末の歓楽街が混在する。ハッキリ色の違う二つの地域を持って、高輪が東海道の玄関だとすれば、ここは裏道としての中原街道の江戸への玄関だったのだろう。道々新しいマンションや、TOCなどのビジネスビルが建ち並び、コンビニが軒を連ねて今風ではあるのだが、何故か華やかさにかける。まして中原街道を不動前方向に曲がった瞬間、そこから桐ヶ谷斎場に向かう道は、人家や商店がそこそこ密集してはいるものの、なんともうら寂しい光景が続く。
勤務の都合で開始に間に合わないのはわかっていたので、お花だけでもと会場に入ってゆくと、知り合いの先遣隊が、ちょうど帰りかけていた。その時、はじめて自分の無謀に気づいたもののもう帰るわけにもいかない。目のあった隊長に引き連れられ喪主に紹介されて、二言三言弔意を述べてそうそうに引き上げさせて頂いた。先遣隊に合流するのも気が引けて、誘いを固辞して、単身五反田まで戻る。途中、前に来て気がついていた新古書店を覗いて、浄めの書棚巡りを小1時間。駅に向かう途中、大昔によくいっていた小さな店を思い出し、やっていたらいいな、と旧五反田東映の川向こうの一角を池上線方向に入り込む。角の大きな店のとなりに、改装して小ぎれいにはなっていたものの雰囲気はあの頃のままのその店が。カウンターの中は若い人(二代目なのかな)だった。昔ながらのメニューも実質本位で決して多くはないが、楽しい品揃えでちょっと嬉しくなりながら、浄めの二次会。ゆっくりと冷や酒で今日、今のことなどボーっと考えつつ、まったりと10時頃まで過ごさせて貰った。