異人館巡りin神戸 (Last) aug.22.2005

兵庫県公館」の庭に回ると、数人の女子中学生が練習帰りの格好でくつろいでいる。この施設の暖かさを感じながらJRの高架下へ向かう。まず中学校の近所の、古本屋さん。文学、美術を中心に上品な品揃え。ゆっくり店内を覗いたときには、まだこれから始まる「死のロード」は、予感さえもなかった。線路沿いの道を渡ってガード下に入ると、そこは全くの別世界。若者向けの衣服、小物、フィギュア等々、オタクと数寄者の天国であった。東京なら多分、消防法で存在さえ許されない空間が延々と神戸方面へ続いているのだそうだ。
真夏の炎天下を嫌って暗いガード下を、点々と存在する古本屋を一軒一軒虱潰しに踏破するという、今回のガイド氏の計画は、はじめた段階では何の疑問もなかった。薄暗い店頭に並ぶ怪しげなグッズを眺めながら、最初の店に入った。それから、おもしろい店、そうでない店取り混ぜて、歩き始めた二人の前に現れるのをすべて覗いていったのだ。そのうちに、手持ちの荷物は増えてくるし、日は射さなくとも、やっぱり暑いし足取りはだんだん重くなってくる。一旦切れた高架の向こうに見えた喫茶店は、砂漠を横断した隊商におけるオアシスのごとくであった。その、「コンビニ弁当、持ち込み可」という昔懐かしい店で、アイスコーヒーを堪能して人心地になった探検隊はさらに奥地を目指すことになった。元町駅を遠く離れ、開いている店さえ少なくなってきたそこに目標最後の店があった。
やれこれで終わりかと思った素天堂に、「これからはJR元町に戻りながら、商店街に点在する古本屋をチェックする」という、隊長のお言葉がかかる。商売をする気があるのかないのか、隙だらけの棚に絵はがきだけを売る店になってしまっている店を、皮切りに、元町に重い足取りで向かう二人であった。
明るいけれど閑散としたアーケード街を、帰りの時間を気にしつつ次に行く店をチェックしていたら前の方に「古書市」ののぼりが! 「予定外だよ!」と悲鳴を上げつつ、結局はいる二人。「ざっと、ざっと」と呪文を唱え、それでもブッツァーティの「石の幻影」を発見。他にも数冊。「まだ行かなければ」という隊長の急かしに、まだ見残しがある会場を出る。ところが、お薦めの本屋さんがしまっている。悲鳴とともにそこを離れ、駅の近所の喫茶店でまた一服。
どうやら長かった神戸古本探訪の旅もこれで終了になりました。来週は引っ越しだというのに段ボールいっぱいの買い込みを、一体どうするつもりか。その呪いは次の週にしっかりたたったのです。しかし、楽しい阪神訪問ではありました。ハードディスク・クラッシュで300枚あまりのデジカメ画像が吹っ飛び、残念ながら、あのフランス窓に吹き込む風に膨らむ「萌黄の家」のカーテンをはじめとした美しい異人館の写真こそなくなってしまいましたが、記憶の中の愉しい、美しいものはしっかり残そうと思っています。そうして、次の機会にはゆっくりと目標を定め、神戸の街と古本屋さん巡りをふたたび堪能したいものだと思っているのです。この街にはもっと愉しいことがいっぱい詰まっていそうだから。