未来都市の考古学展 1996年 7月24日〜 9月16日 東京都現代美術館 「近代都市と芸術」展と併催された、名企画展。

sutendo2005-10-18

当時横浜に住んでいた素天堂にとって“江東”の巷は、とてつもなく遠かったものでした。実際には中央区内に長く勤めていたので、川さえ越せば江東区だった訳なのですが、用がなければ地の果てと同じ、ということで、酔狂にも、わざわざ新橋からバスに乗って江東区を縦断し、吾妻橋の終点までいき、隅田川を渡りなおして、浅草の「神谷バー」までいったことくらいしかありませんでした。まだその頃は木場公園自体が工事中で、館蔵品として購入予定のリキテンシュタインが○億円とか騒がれていた現代美術館はまだ形をなしていなかったと思います。いってみれば、あんまり現代美術に関心のない素天堂としては、観念的にも遠い場所だったのです。品川の「原美術館」がそうであるように。
しかし近代建築気違いの素天堂にとって、近代都市といわれては覗かないわけにはいきません。重い腰をやっと上げて夏の暑い日に江東区まで上京してきたのです。多分、その頃のことだから、新橋からバスに乗ってだったでしょう。今でも便利のいいロケーションとは言い難いけれども、横浜からだから半日仕事でした。でも、それだけの苦労をした甲斐のある展覧会でした。ルネサンスの理想都市から、ナチスドイツ(アルベルト・シュペーア)の大ベルリン計画、さらに未来派の建築家サンテリアの空想建築まで、未来を見つめる計画たちでありながら、すでに、存在自体が考古学の対象であったたくさんの営為を目の当たりにできた素晴らしい展覧会だったのでした。図録自体も両展とも充実したものでしたが、引っ越しの際の蔵書整理で両方とも手放していたものでしたが、やっとまた素天堂の手元に戻ってきてくれたのです。