久しぶりの鎌倉

といっても素天堂・絹太のことである。建長寺明月院もあったものではない。お茶と食事で休憩した以外は、結局古本屋巡りである。
小町通の喧噪を煩わしく思いつつ、足早に通り抜けてまずは「藝林荘」。大きいものは買う気がなかったのでまずは店頭の見切り本から、と思ったら、あったよ、収穫だよ。角川文庫版「横溝正史読本」「恐ろしき四月馬鹿」、「読本」は黒背、しかも表題が読めないくらい印刷のはがれている汚れ本だが、当然、黒死館本としてありがたい存在なので。それから駅の方向に戻って「木犀堂」純文・美術関係の在庫が豊富な店。見切りの台で矢野峰人のエッセイ集「曲中人物」昭和二十三年版と牧神社版「三富朽葉研究」の汚れ本を。それから、駅そば、線路脇の寂れてボロボロの鎌倉名物の洋館へ、あやふやな記憶を頼りに、裏道経由で絹太氏を案内する。今でも残っているのが奇跡なくらい崩壊しているのに、やっぱり感動する。で、踏切の向こうを見ると、なんだか古本屋っぽいたたずまいの店があるので渡ってみる。「游古堂」古本と骨董のお店だという。無雑作に入り交じる本とものを掻き分けて店内を物色。結局店頭の見切りの台からとったロラン・ド・ルネヴィル 大島博光訳「詩的軆験」のみで店を出る。これはあたりかもしれない。そろそろ疲れてきている絹太君を励まし、由比ヶ浜通りの、今日の本命「公文堂」へご案内。
前に比べると店頭の見切り台が減ってはいるものの、やっぱりおもしろい。中に入ったらまったく別行動で、二人とも何を買ったかその時はわからない。うーん毎度のことながら微妙な品揃えが見事で、なかなか他で見られない古めの本が豊富だ。店内を苦悩とともに物色して、買ったのは、懐かしい元田脩一「アメリカ短編小説の研究 ニューゴシックの系譜」とイェーリング「歐州民族文化史」。呆然としながら店を後にして、遅い昼食を駅前のビル内ですませてから、行きがけに話していた素天堂既遊の地、戸塚で降りて、何軒か本屋さん巡り。何とか収穫もありました。で、締めは駅前通のケーキ屋さん「カナール」でお茶。横須賀・総武快速で帰宅という一日でした。終わってみたら収支がほぼ一致していて何となく苦笑い。