落穂拾いから 合本というもの 続

sutendo2006-02-18

前回の演劇雑誌に続いて、今回は美術関係に。美術関係といえば、洋ものでいえば、「The STUDIO」19世紀末に創刊された英国の美術雑誌、ビアズリーなども関係したこともあるのだが、なぜかその合本が比較的安価に手にはいるので、20世紀初頭の装飾美術などの素天堂好みの作品のコレクションには最適。ここから、未知のイラストレーターの手がかりが見つかることもある。が、今回は日本物ということで、やっぱり銀座の美術系某古書肆で入手した、大正末期から昭和初期の「中央美術」等が中心のスクラップ。前回にも書いたとおり、作った人の趣味性がきついので、あんまり参考にならないのは同じなのだが、この合本の一部に妙な木版による連続画が入っていた。「太陽を追ふもの」という総題がつけられフランス・マセリーと作者名がクレジットされている。
四〇枚に及ぶその作品は、表現派的な風味がおもしろいのだけれど、世紀末やアール・デコのお耽美が好みの素天堂からすれば、あまり、縁のない作風に見えた。とはいっても、いわば「イカロス寓話」の現代風な絵物語になっているし、全体の感じにメカニックなユーモアがあって、社会的な風刺にありがちなヒステリックさがない。いわば、一九世紀におけるフランスのスタンランなどと共通するものがありそうだった。そのうちに、私家版の画集でも手作りしようと思っていたのだが、この作品は原題を「Die Sonne 」といい六十三葉の木版画による物語で、しかも、古書価がつくくらいの著名なものだった。この間検索してみたら、無名なのは素天堂にとってだけで、実際には名の通った反戦画家で、まあ、あんまり思想的なものに興味がない素天堂にとってのみ無名も当然だったという訳なのである。