今回は手放し…… 犬にインタビュー

sutendo2007-02-06

ピントはずれは承知で今回は、身内本。作者曰くラブコメだというが、見事な奇想ギャグが全編に溢れている。メインキャラは本来の原作では脇の彼↓

この小さい犬のキャラ設定を知っていると、一段と面白いらしいのだが、ジャンルや原作を知らなくとも十分すぎるほど楽しい仕上がりだった。主人公(今回は思いっきり悲劇的な立場)である〈カカシ先生〉や〈イルカ先生〉の悲惨な状況も笑えたが、なにしろ、無表情なご意見番たるべきパックンの巻き込まれる、悲しくも大笑いな惨劇は、スクリューボール・コメディの見本である。多分このジャンルの読者にとっては、○○○○×カカシという設定が思いっきりショックかもしれないけれども、ネタバレになってしまうので残念ながら伏せ字。
思わぬ理不尽な状況から、不本意な芸者姿に身をやつし、さらに野球拳で負けて、しどけない肌襦袢姿のパックン。逃げるに逃げられぬ状況からさらに主人のカカシを苦しめる結果になっていってしまう。とはいえ、忍犬達とカカシの、小さな酒盛りの夜の光景が象徴しているように、この作者の視点には、登場人物達に対する優しさがこめられていて、読後感はさわやかだ。

誰かが気を利かして、薪を囲炉裏に投げ込み、火が赤々と燃え始めると、段々にカカシを取り囲んで丸まっていく。/深手の鉄鍋に五右衛門風呂みたく底板を沈めて、そこに大きめの急須を入れておく。/酒をカカシに勧めるのは、決まってワシの仕事だ。/急須から湯飲みに注がれた酒を、少し顔を綻ばせてちびりちびりと飲み始める。/並べた小皿に、カカシが少しだけ酒を注ぎ返してくる。/ワシと、あと二匹ほどがご相伴に預かり、後のものたちは、綻んでくる暖気の中でまどろんでいる。/酒が進むと、次第にカカシの緩んだ中にも残されていた棘のようなものが崩れていくのが分かる。/その証拠に、余裕をもった指が、近くに寝ころんだ犬の毛並みをゆっくりと掻き分けていくからだ。/いつも、そういう穏やかで、何もないとはいえ不思議と信頼感が湧き上がってくるような時間を、ワシは特に好んでいた。