一部の方への追加情報/東 久雄の正体?

sutendo2007-09-02

素天堂の個人誌『黒死館逍遥』第五巻の付録につけた、『新青年』昭和九年七月号掲載のエッセイ「淺草興行界回顧」には〈東 久雄〉と筆者名がクレジットされていた。お読みの方はおわかりだと思うが、オペラ界の内情にも詳しく、どう見ても業界関係者に違いないと思われるのだが、筆者紹介のために資料を当たってみたものの、どこにもその手がかりがなかった。 と思っていた。
ところが、その文中にヒントが隠されていたのである。文末に筆者の最近の仕事として「松竹グランドオペラ」を石田一郎と組んで開催したという記述がそれである。しかもその答えは、今回復刻した『新青年』同号掲載のコラム「すりい・もんきい」中に出ているのだった。

松竹藝術集團第一回公演グラン・オペラ・ルヴュウなるもの(以下略)は、その底を割ると淺草オペラの殘黨石田一郎と陸の龍宮日本劇場をクビになった内山惣十郎の仕組んだ狂言なのである。

晩年に雄山閣刊『浅草オペラの生活』と題する貴重な証言集を残した、内山惣十郎という当時のショウ・ビジネス界での第一人者に対して、カラカイ半分に書かれた「すりい・もんきい」の記事と、浪人中とはいえ、その本人に書かせた真摯な回想エッセイを同号に掲載するという荒技は、いかにも『新青年』らしい編集振りと言えるだろう。