ぞぶり、/ぞぶり、/と、血と肉の啜られる音が響く。(16)

sutendo2008-05-16


都大路を鬼が跋扈した時代があった。その時代を生き生きと、哀しく描いた物語が新聞連載されたとき、その物語と、描かれた挿絵に惹かれて自分なりの絵本をつくろうと思ったのだが、生憎と、ある事情で一日分がかけてしまったので、とうとう完成させることは出来なかった。
新聞連載ということもあって、「陰陽師」の既読者なら、当然、常識かも知れないことを、もう一度、読み返すことが出来る貴重なエピソードに仕上がっていた。鬼がいて、生きた牛を食らうその時代の、妖気溢れる恋物語は、毎回添えられたその悠揚迫らざるその挿絵によって彩られていた。後に絵本としてつくられたものより、かえって、墨によるモノクロームが生き生きとして、平安の日々を見せてくれていた。今百枚を超えるその挿絵を見返すと、その頃の鬱屈していた自分が甦ってくる。

古いPCに眠っていたそのデータを思い出させてくれたのが、ある人が書いてくれた、絵物語陰陽師」夢枕貘・村上豊の感想だった。勿論その感想とこの思い出話とは何の関係もないが、ゆったりと語られる友情と、そこに絡む〈怨愁〉に引き込まれた日々であった、その時のことをおもいだして、こんな違反をやってみたくなった。
「ゆこう」/「ゆこう」/そういうことになった。(112)
その時に取り込んだ画像は、新聞の紙面から浮き上がって、いま、還ってきてくれた。どの絵にも力強さがあって、本当に選ぶのに苦労した。