年明けの椿事 アセテートで大賑わい

仕事始めの緊張で、二、三日、日記を休んで(もっと長い時もあるが)いる間に、アクセス数が爆発的に伸びてビックリした。原因はこちら。藤原さんには先号の『黒死館逍遙第七号』をご紹介頂き、〈今日のあぶく〉効果はいやと言う程存じているつもりだったが、たった一日で、一ヶ所から六十近いアクセスをカウントするというのは、このゆるい日記としては、開始以来である。アセテートという組織はとにかく、大手の出版社ではできないが、しかし重要な意味を持つ出版ということでは、例のないお仕事をされていると思う。
お付き合いのはじめは『近世建築論集』だった。書名は抽象的だが、内容は明治初期から江戸期に遡る「規矩術(大工さんの製図法)」の、西洋建築との関わりを具体的に検証した、近代建築揺籃期に果たした、日本人工匠たちの功績を裏から称える名著であった。

素天堂の書棚では毛綱毅曠の奇書『七福招来の建築術』と並べられているが、それは正しい配列なのだろうか。それとも、お手本にした、鹿島出版会SD選書と並べた方が、この本の見場が上がるかも知れない。などとくだらないことなど考える。
趣味で建築と薄く関わっているだけの素天堂であるから、アセテートの出版だからといって全てを触れるわけではないが、その後も『ピラネージ建築論 対話』や、渡辺豊和著『文象先生のころ 毛綱モンちゃんのころ』などと細々とお付き合いさせて頂いている。そんなご縁なので、この貴重な〈非・建築史ガイドブック〉が、さらに知られるお手伝いができたのは、まこと、日記冥利に尽きよう。