図録を読みふける

K氏の紹介で最近目を通していたこちらの記事からさそわれて、遂に注文してしまった一連の宇都宮「栃木県立美術館」の図録、一昨日届いた。「国立近代美術館1982-83」での衝撃の出会い以来、久しぶりのデルヴィル「オルフェの死」が表紙の『ベルギー象徴派の巨匠展1996-97』を始めとして、すべてが、力の入った資料性の高いものばかり。昨晩もK氏と話したが、素天堂の考える展覧会の図録というのは、まず、展示され構成された作品本体と出会った後での確認作業だと思っている。それでも、残念ながら縁がなく出会うこと叶わなかったときには、作品を偲ぶ貴重な媒体として存在するものだと思っていた。ところが今回送られてきた数冊、就中、『躍動する魂のきらめき 日本の表現主義展2009』は昨今多くなってきた、展覧会土産とは一線を画す、資料性の高い図録の中でも、異彩を放つ出来上がりであった。その膨大な作品量と、それを上回る資料の充実には、喜ぶより、眼を剥いた。日本近代の鬼っ子、大正時代を中心に繰り広げられた、若き作家たちの内なる〈表現の魔〉を余すところなく収集し構築した一大建築であると言っていい。二日たってもまだ、表面をさすった程度でしかないけれども、ここに繰り広げられる作品の集成は、それぞれが単独のジャンル展を可能にする密度なのである。然し、会期を終わって、なおかつ読み切れもしない本の感想は、却って贔屓の引き倒しになってしまうだろう。時間をかけてゆっくりと読み切った上で、いや出来るならば、この作品群と正面から対峙した上で改めて感想を書こう。それだけの価値はある。