東海血風録 時とところのアラベスク(九)

無理矢理入った風呂が利いて、寝起きも爽快。東海訪問最終日。ちょっと古本屋でも覗いてのんびり新幹線待ちの間、古い知人に連絡して旧交でも温めようと思ったのだが。
K氏期待の小倉トーストを含む、朝のパン・バイキングを終わり、部屋に戻り、K氏の出力してくれた名古屋古本地図を検証する。LANをつないで名古屋の古本屋さんの営業時間を確認して、おまけに近在の古書展を見てみると、博物館で古書市をやっているらしい。思わず、古本の虫がムズムズ起きてきた。
まず、市営交通の休日パスを乗車駅で購入。JR名古屋駅まで戻り、コイン・ロッカーに大荷物を預けて、博物館に。出口をあがると、道の向こうに、もう、予定外の本屋さんが。逸る心を抑えて、目的の博物館へ。あまり大きくはないが充実した市で、二人とも、それなりの収穫。道を渡って本屋さん巡りを開始。まず、最初のお店を出て、少し早いが味のあるお店で昼。ユーミンを聞きながら、きしめん定食を食べ終わって、鶴舞駅に向かう。ここから、大須までの古本行脚道中である。
鶴舞の交差点から大須まで、大きな通りを挟んで十二、三軒の本屋さんが点在しているのだ。まあ、期待はしないようにと思っていたのだが、大間違い。それぞれのお店に個性があり、高い天井までいっぱいの棚を埋める古書の波が、我々を襲う、一生懸命手に貼り付く古書を振り払いながらも、結局各店で二、三冊を買い込む。長閑な陽気ではあるけれど、三時間は一寸きつい。喉の渇きと若干の疲れを癒したいのだが、本屋はあるのに、喫茶店がない。一つ目の上前津駅近くなのに、何しろビルはあるけれど、目立ったお店がない。目に入る本屋をシラミ潰しに点検し、重くなってきたエコ・バッグを持ち上げ疲れてきた時、交差点の陰に小さな看板の喫茶店が現れた。ホッとして一服。
アイスコーヒーで鋭気を補給し、後半戦に突入。大須の喧噪に目を瞠るK氏に、地図の確認をして貰い、最後の目標店を終了したのが、なんと午後五時過ぎ。大学堂、飯島書店を始め個性豊かな店揃いの、名古屋古本行脚を堪能して、またもや、蔵書を増幅させてしまった。二人併せて五十冊超の大買い物に悲鳴を上げる手腰をなだめつつ、名古屋駅に帰還。荷物の整理を始めてビックリ。
あちこちに突っ込んだ買い物を持参したカートに詰め替えると、六十センチを超えるA4のカートが埋まってしまった。しかも、時間は六時近いし。友人に連絡どころか、一服する時間さえない。改札をすませて待合所へ入るのが精一杯。交代で駅弁を買いに行ってホームへ上り、帰京の新幹線を待つ。帰宅し、やっと買い物の整理がすんだのは、十二日の夕方になってしまった。最後になるが、企画予約して貰ったK氏のお陰で、数年振りの充実した小旅行を過ごすことが出来た。ありがたいことである。