万聖節前のお祭り騒ぎ

町という町が、黄色いカボチャで埋まっていた。

素が、最初にその言葉に接したのはご多分に漏れず、内田善美だった。小品『万聖節に黄金の雨が降る』は少女と、妖精、病に冒された青年を巡る小さな物語。哀しい秋の話だった。田舎町ゲイルズバーグで起きた小さなエピソードで、「Trick or Treat」を聞いた時には、まだ、日本にはカボチャ大王は来ていなかった。金木犀が散った後にふる〈黄金の雨〉は街に、冷たい冬をつれてくる。と、ロマンチックはそれくらいにして。
小春日和のハロウィーンに、S県、特急の止まらない県庁所在地だったところまで、Jack O Lanternに逢いにいってきた。一寸不調な、ハロウィーンの国の小王は、やつれてはいても、元気そうだった。開発途中の街の真ん中にある、仮の居城は清潔で、惰弱の国からグータラをひろめに来たような素天堂には似つかわしくないとは思われるが、小王様の居城に文句は言えない。幸いお見知り置きの方も見えて、いつもの通り言いたい放題の小一時間であった。瞥見を終えて退場する際も、小王直々のお見送りを受けながらの光栄でありました。
降りた側が再開発の途中でもあり、無味乾燥な町並みに思えたが、ガードをくぐって反対側に出ると様相が一変。土曜日の町並みは人で溢れ、なんだか素敵そうなお店が並んでいた。大きな本屋さんが見えたと思ったら須原屋だった。江戸期から明治にかけての建築技術書の名門だった版元の名残である。同行の方に誘われ、旧市街に入って見つけたケーキ屋さんは活気に溢れた素敵な店でありました。
男三人いくところといえば、肉刺しに決まっているということで、その後流れ込んだ二階の小さなお店がスゴカッタ。外食の達人H氏のお薦めに間違いはない。実質的なメニュウは立派。その後駅まで抜ける路地では、検索で見ていたお店に遭遇、一瞬の隙に張り付くものがありました。その後の〆のおそばも堪能して、おじさんのハロウィーンは終了したのでありました。