愚行二件 時とところのアラベスク(十二)

帯が欲しくて、久しぶりにコミックスの新刊、二冊。

「墓に咲くバラ」を、初出で読んで以来のファンなのだ。その出来栄えに興奮して、無理矢理読ませた甥っこも、もう三人の子持ちだ。最初につぶれ大福君が登場する「美少年殺し」は、単発のノン・シリーズだったと思う。
常々公言していた、「少女漫画界のサザエさんを目指す」はとうに達成されているし、地口やミステリの妙味は、深まりこそすれ、枯れる様子もない。初期の奇想耽美も捨てがたかったが、今では、これこそこの作家の醍醐味であろうと思っている。本編のみの百巻目、待っています。
もう一つはこれ。

“LOUŸS, Pierre. - Romans & Nouvelles” 美しい装丁に惹かれて、思わず、(素天堂的には)大枚を払って買い込んでしまった。「フランス語も読めないのに」という後からの言葉の通りだが(何、英語だって読めない)、マリエット・リディスのモダンな挿絵は、生きていれば、P.L.のお気に入りになっていたかもしれないと思わせる。

いつの間にか集まってきた、彼の作品だが、これでとうとう小さな棚一段分になってしまった。カルベの「アフロディット」嗣治の「ポーゾール王」。信太郎訳角川文庫版「ビリチス」の壺絵風挿絵。多分リブロのバルビエ「ビリティス」はもう無理だろうし。作品集もあるし、P.L.はこれで王手かなと思っている。