永遠の闘い

ほぼ終日歩く単純作業と、一軒一軒、個性も暮らし向きも違う方たちと対面を続ける作業が続いている。それにも馴れてきて、膝も悲鳴を挙げなくなった。例によって暮に向かっての作業も少しずつ形になって、ホッとしていたら、古い友人から、書籍が届いた。
本人も特に公表していないので書名は避けるが、友人が三十年以上にわたって格闘してきた、いわば軌跡のトレースの集積だと思った。代表作かと訊ねたら、まだ、入門に過ぎないと返事が来た。数千年に渉って行われてきた訓釈の歴史を、たった三十年で解きほぐせるものかというのは、彼との長い交際のなかで味わってきた実感ではある。
縁なき衆生の一人として、端から見ていたのは、一文字一文字、丹念に外字作成を行ってきた作業だった。この数年で、PCの作業もフォントさえ妥当ならほぼ再現できるようになってきて、仕事は楽になったろうと思っていたが、そうでないようなので驚いている。実技と理論の乖離はある意味当然なのかもしれないが、四面楚歌のなかで、孤独な作業は続いている。
夢を食い続けてきたのは、お互い様だが、自分は先も見えてきたような気がするのに、彼はまだまだ古典の難曲に挑み続けるのだろうか。