本意ではないとはいえ・・・ 長すぎる春休みを振り払うように

家でくすんでいると、体の回りに靄がかかって来るようで、それをはらそうとK氏が、色々企んでくれる。昨日は、六義園の夜間開放とライトアップである。何しろ、一人暮らしの時は億劫がりで、まず出たことのない庭園巡りなので、自分から企画など立てられもしない。そのくせ、根が好きだから、出掛ければはしゃぐのは自分の方と言うことが多い。昨日もそうだった。始めていく庭園のライトアップ、期待もしていなかったのだが、まず、正門入り口の枝垂れ桜に度肝を抜かれた。厚い人垣もやむを得ない絶景である。入った時はちょっと早かったと思うくらい、明るさの残る夕景だったが、三十分もしないうちに翳って足下も見えないくらいになった。

足下を照らす照明を頼りに、順路を回っていく。肩が触れるくらいの人出も構わず、立ち止まって撮影する人も多いが、それもやむを得ない、光景の変化なのである。残念ながら、夜間は半分の行程に限られているそうだが、それも電源の問題や安全面で仕方ないかもしれない。

池の東側の順路は、引きも切らぬ人の流れだから、何ともないが、こんな光景の脇を一人で歩くのは勘弁して欲しいくらいだ。残念ながら手振れがひどくてお見せできなかったが、まるで、ベックリンの『死の島』を彷彿とさせる光景もあった。

ゆっくりと時間をかけて園内を巡り、最後に大枝垂れ桜に戻る。嘆声が埋め尽くす樹の前で、自分もそれに倣って何枚か撮り、くぐり門を出ると、休憩所があってそこで軽食を給している。幸い椅子が空いたので、K氏が食料を買いに行ってくれて、一休み。帰りは期せずして、別のルートで帰ることになったが、旧馬場だというその通りを出ると、何たることか入場待ちの人の長蛇の列ができていた。早めに来たかなと危惧していたK氏だったが、とんでもない、マジックアワーを味わえる、最高のタイミングだったのである。