ガラパゴスオオオカガメ

道を歩いて、突然あの薫りに包まれると、読み始めた頃の少女マンガのことを思い出す。
連載中の『ポーの一族』から始まった少女マンガへの興味は、拡がるばかりで、又読み始めた少年漫画週刊誌と、創刊の相次ぐ青年誌とともに数え切れないくらいの量になっていった。そんな中、長い間のモラトリアムから抜け出して勤め始めたのが、印刷会社の設備管理の職場だった。仮眠付き二十四時間勤務だが、夜は空調関係の監視が主任務で、寝付きさえしなければ、比較的時間の融通が利く。自分にとっては文字通り、宝の山で過ごしているような数年間だった。
そんなある晩、廃棄処分の置き場から持ってきた、少女マンガ誌を開いていた。読みつけてきたから、違和感もあまりなく眼を通していたら、不思議な作品と出会った。絵柄は全くベタな少女マンガ風であまり気に入らないのだが、読み始めて物語に引き込まれた。あの頃は男性ファンが、ベタな少女マンガが好きだったりすると恥ずかしいというような風潮があったのである。
ある少女が所属する劇団が事故のために公演の機材やキャストが会場まで届かない自体になった、というのだ。しかし、会場は観客が既に待機している。そこで、主人公の少女は破天荒な行動に出る。僅かな機材と本人一人で、即興の一人芝居を始めるのだ。これは多分有名なエピソードだと思うのだが、この話に引き込まれて、つぎの朝駅前の本屋に駆け込んで、第一巻を買い込んで、あの除夜の鐘と横浜港に飛び込むエピソードで完全にはまった。
毎日一冊のペースで読み始めて一週間、とうとう既刊分は読み切ってしまった。それからの付き合いだったが作品の中断と、自分自身の興味の方向がずれてきて今ではさすがに新刊を待って買うようなことはなくなったが、店頭にあれば、オッ出たかくらいの興味は持ち続けている。先日久しぶりにお逢いしたある方との話の中では、その話は出なかったのだが、翌日のご本人の日記にこんな写真が出ていた。

これは凄い、凄すぎるが、実はこの作品、これくらいの悪ふざけに負けないくらいの力は持っているし、オマージュとして、最もふさわしいかも知れないと思っている。版元のサイトを見ると、期間と場所が非常に限定されたキャンペーンらしい。某氏は貴重な経験をされたのである。
後で検索してみたら出てきたが、「ジーナと5つの青いつぼ」と言う作品。やっぱり、多くの読者にとって印象に残るものだったようだ。