strategic gay flavor

先日、ご縁あってある方とお話しができた。その方の主宰されている企業のサイトがあまりにも魅力的なので、つい調子に乗って「グラム・ロック」が好きですと口走ってしまった。たしかに、マーク・ボランとT・REXという存在は自分の中で大きな存在ではあるけれども、今ではCD『ユニコーン』が一枚、ヴィデオテープが数本残っているだけだ。
初来日の武道館公演も見てはいるが、本当に好きで聞き続けていたのは、スティーブ・ペレグリン・トゥックと組んでいたアコースティックなTyrannosaurus Rexの時代の『My People Were Fair /Prophets Seers & Sages 」の二枚セットのLPだった。リアルタイムで彼やデーヴィッド・ボウイーが奇矯な衣装や化粧で登場した時はあまり好感を持っていなかったというのが本音だ。当時、パック・イン・ミュージックのDJだった糸居五郎が、司会を務めた武道館公演で「マークのお化粧に時間がかかっておりますので、開演までもう暫くお待ち下さい」といった時に大きな拍手があったのは覚えているが、それは自分にとっては好印象とはいえなかった。ボウイーにしても、好きだったのはデラム時代の一枚目(二枚目はなかった)だったし、ベルリン時代のアルバムについても人から聞いたり、ラジオで聞いて良いと思ってはいてもついに、LPは買うことはなかった。とはいえ彼らの新しい方向の楽曲感覚が、後の音楽シーンを大きく動かしたのは確かだった。
音楽的には、ビートルズの『ラヴァ・ソウル』や『サージャント・ペパー』の創った方向だったけれども、当時起こりつつあった、〈前衛〉と〈伝統〉の融合の流れに大きな勢いをつけたのは、彼等が始めた、戦略的なバイセクシュアル風味だったのではないかと思っている。日本では、前衛ロックをギャグにした、青池保子の怪作『イブの息子たち』という偉大な作品の後押しを受けて、日本の音楽大衆を大きく変えていった。音楽のみならずサブ・カルチャーにおける奇妙な同性愛趣味の肯定は、今に至るも彼らの影響を離れてはいない。