昨日渋谷で、今日上野

特に用事もなく、ノンビリした三連休。見ておきたかった渋谷「松濤美術館」の企画展「大正イマジュリーの世界 デザインとイラストレーションのモダーンズ」と科学博物館特別展「空と宇宙展−飛べ!100年の夢」 を続けてみてきた。ともに、K氏の企画である。なんともディープなお年玉ではあるが、正月三が日を仕事と病気で終わらせた素天堂にとっては、一週間遅れの年始なのである。
タイトル通りの『東京行進曲』日和のなか、まずは渋谷である。思ったほどの人出もなく軽い食事をすませて初めての「松濤美術館」を目指す。途中、同館前のバス停はあるのだが入口が見あたらず、ちょっと迷う。大正期の十五人のデザイナー、イラストレーターにスポットを当てた全く素天堂のためのような企画。明治と昭和の狭間で、遅れてきた世紀末の香気を存分に嗅いできた。夢二、華宵もさることながら、初めて知ったデザイナーや、後に画家や陶芸家として名をなした佐野繁二郎や富本憲吉の、芸術運動の一環としての装丁も興味深かった。
イマジュリーとは聞き慣れない言葉だが画像による大衆芸術というような意味であるらしい。規模は大きくないが充実した展観で、自分が興味を持って触れてきたあれこれが目の前に繰り広げられるのにゆっくり浸ることができた。お土産は橘小夢の「水魔」額絵と図録を二冊。
休む間もなく、続いては上野、科学博物館。特別展の目玉は評価の著しい「はやぶさ」の展観かもしれないが、素天堂にとっては、草創期航空機のヴァラエティに富んだ画像と、新発見された戦前の航空関係の図面、機器は別の意味で戦前の空気を身近に感じることが出来た。



航研機(1938 世界記録樹立 総飛行距離11,651.011Km)

羽田飛行場での自動車学校のパンフレットは、足穂が通った世界そのものなのだし、飛行機製造法の入門書は、それを見ながら飛行機の自作に挑んだ、彼の空への憧れを間近にするものだった。今日も堪能して特別展を出、本館の常設展示に向かう。
大昔の「アマゾンの首狩り族の干し首」と、薄くらい地下の剥製展示に代表される、世界、宇宙の凝縮された雑然とした雰囲気を、ノスタルジーとして持っている自分にとっては、まるで別物の展示方法であった。あまりにも明るく楽しく整理されたテーマパークのような展示は、建物自体の魅力を見せるためかもしれないが、ちょっと物足りないものだった。
とはいっても、往時の物々しくも重厚な雰囲気はまだまだ各所に残されている。あの階段、あの明かり取り充分堪能して会場を出た。休日の上野公園を広小路まで歩き西郷さんのところで、こんな光景を見つけた。