天国のような煉獄の日々

恒例になってしまった、コミケまえの修羅乱舞。とはいえ、今までのほぼゼロスタートに比べれば、と思っていたら、やっぱり、似たようなものになってしまった。『黒死館逍遙』としては、テーマも出尽くし、云いたいこともなくなったので取り敢えず終了し、今回は大昔『幻想文学』誌に掲載していただいた「まぼろしたてもの」復刻で、増刊第十三号。それで終わろうと思ったのだが、なにしろ、もう二十年も前の作品でもあり、あっちこっち、使い込んでしまったりで、そのまんまの復刻は不可能だと云うことが見えてしまった。
そこで、掲載した資料は活かして、地の文を新しく書き起こすことになったのだが、いつもの通りの舌足らずを指摘され、泣きながら書き直しの日々を送っている。
しかし、幻想建築の分野は元々素天堂の夢の源泉だったし、今までと違って材料には事欠かず、日々何冊となく材料を参照している。タウト展図録や、彰国社の本事態が幻の『幻想の建築』、そこに出てくるアインシュタイン塔、アルプス建築、そしてゲーテアヌムに浸りきった日々が続く。うれしいに決まっているが、元々曖昧模糊としたテーマだから、いくら描いてもキチンとした骨が見えてこないと、隣でK氏が赤字だらけの原稿用紙を突き出してくれば、夢から醒めてキーボードに向かわなければならぬ。しかも、前半までなのに分量だけは建てられなかった不幸な建築や、空に浮かぶ館だけで、一号分になりそうな気配まで漂えば、一体十三冊で終わる計画はどこへ消えていってしまったのか。訳のわからぬ建築書に囲まれながらの、タイトル通りの日々の最中である。